"18年消えていた母の第一声は「手取りいくら?」" 第2話
私の声は、自分でも驚くほどく沈んでいた。 母親の指がピタリと止まる。
「待ってたよ。目も、目も。毎、話が鳴るたびにお母さんかもしれないってって受話器を取った。でも度も話なんて来なかった。おばあちゃんが崩して、パート掛け持ちして、私の学費を払ってくれたの。成式も、就職活のスーツも、全部おばあちゃんがしてくれた」
テーブルので、自分のスカートのを爪がい込むほど握りしめた。
「、度も顔を見せなかったが、現れた途端におの話をするの? 冗談じゃない。円だって払うわけないでしょう」
内の騒がしさが、瞬だけのいた気がした。 母親の顔から血の気が引いていくのが見えた。 けれど、それは反省でも悔でもない。 い通りにいかなかったことに対する、らかなりのだった。
「昔のことは、もういいじゃない」
母親は吐き捨てるように言った。
「あのは私だって若かったし、父親がんでパニックだったのよ。音を抱えてきていけるわけなかった。おばあちゃんに預けたのは、あんたのためでもあったの。餓させるわけにはいかなかったんだから」
「私の、ため?」
「そうよ。現にあんたはこうして派に育って、ちゃんとした会社に入れた。おばあちゃんに育ててもらった恩は認めるわよ。
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でもね、産んだのは私よ。血がつながってるのは私なの」
母親はを乗りし、私の顔のに顔をづけた。 コーヒーの匂いに混ざって、古い防虫剤のような饐えた匂いがをつく。
「あんた、おばあちゃんには毎活費入れてるんでしょう? 由佳から聞いたわよ。なら私にも同じようにする義務があるはずよ。法律だって、子供には親を扶養する義務があるって決まってるんだから」
背筋が寒くなった。 このは、本当に私の母親なのか。 目のにいるのは、かつて私が夜ごとに泣きながら求めた母親ではない。 老の活費を回収するために、ぶりに娘という『資産』をいして取りてに来た、ただの見らぬ女性だった。
「義務なんてない」 私はちがった。 子の脚がを擦って、ギギッと障りな音をてた。 周囲の客がチラリとこちらを見る。
「私は、あなたにおを払う気はありません。度と私のに現れないで」
伝票を掴み、レジへ向かおうとした。 その背に、母親の尖った声が突き刺さった。
「……そんなたい子に育ったなんてね」
を止めた。 振り返ると、母親は座ったまま、歪んだ笑みを浮かべて私を見げていた。
「あんたがそんな態度なら、私、おばあちゃんのにくわよ」
臓が嫌な音をてて波打った。
「お母さんに直接聞きにくわ。
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実の母親を見捨てるような恩らずに、体どんな育て方をしたんですかってね。だったかしら、おばあちゃん。臓、まだ悪いのよねぇ?」
に血がり、界が真っ赤に染まりそうだった。 おばあちゃんを巻き込む気だ。 あんなに苦労して私を育ててくれた、さくて腰の曲がった祖母を。
「……やめて」
「嫌なら、ちゃんとの話しいをしなさい。連絡先、教えなさいよ」
母親はテーブルのに、くたびれた帳とボールペンを突きした。 私は震えるで、自分の携帯番号だけを殴りきした。 それ以、その顔を見ていたら胃ののものをぶちまけてしまいそうだったからだ。 千円札を伝票と緒にレジに叩きつけ、お釣りも受け取らずにをびした。
夜のたいが、を持った頬を容赦なく叩いた。 袋をしていない指先が、かじかんでかない。 スマートフォンの画面を見る。 分。 私は吸い込まれるように、埼玉へ向かうのホームへとっていた。
武線の急に揺られながら、私は窓に映る自分の顔をずっと見つめていた。 眉根を寄せ、元を固く引き結んだ顔。 さっき喫茶で見た母親の顔と、恐ろしいほどなって見えて吐き気がした。
どうして。 なぜ今になって。
歳のあの。 黒いスーツを着たたちがを入りして、線の匂いがち込めていた。
父親が筋梗塞で急して、残された借の理に追われていた母親は、毎晩台所で泣いていた。