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"110億円を相続した妻を捨てた夫――30億円の誤算" 第15話

あふれる玉座

がけ、澄み切った青空がどこまでも広がるの午。

神堂ホールディングスタワーの最階総帥に、弁護士が恭しく冊の分いファイルを携えて入してきた。

「美桜総帥、財団の設登記、ならびに資産移転の続きが、すべて完いたしました」

デスクのに広げられたのは、文部科学省および内閣府からの認証が眩しく輝く、真しい設認だった。

『般財団法 神堂未来技術育成財団』

き叔父が遺してくれた百億円の資産のうち、億円を基本財産として拠し、全国の志ある若技術者や、困窮する企業の技術発を無償で支援するための恒久な基である。

「これで、おじ様から受け継いだ尊い遺産が、最も美しい形で社会へと還元されることになりますな」

先の温かい微笑みに、私も静かに頷き、にした純の万で財団設の最終承認に自署を刻み込んだ。

カリカリ、カリカリ……。

インクが質なに吸い込まれていく微かな摩擦音が、静寂の内に響き渡る。

かつて、あの暗いのリビングで、夫と義母の嘲笑を背に受けながら緑の婚届にサインしたと同じ、万の音。

あの、彼らは私を無文の負け犬として追いし、自らが完全な勝者になったと信じ込んでいた。

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しかし、彼らが勝ち誇って投げつけたあの緑の切れこそが、私を縛り付けていた偽りの庭という呪縛を解き放ち、百億円の帝国の封印を解くための、決定な引きだったのだ。

署名を終えた類を先に渡すと、先は々と礼し、音もなく部を退していった。

残された私は、デスクからちがり、壁面の巨なガラス窓のそばへと歩み寄った。

元には、遮るもののないパノラマが広がっている。宝を散りばめたように煌めく京の並み。皇居のい緑、張り巡らされた首都速のの帯、そしてく平線の彼方にく輝く富士の峰。

その雄な景を、私はかつてないほど清らかで澄み切ったで見つめていた。

普通の庭の温もりを見て、分を隠して過ごした数。

そのは、浅ましい裏切りと欲によって無残に打ち砕かれた。傷つかなかったと言えば嘘になる。信じていた夫のから「してなどいなかった」「役たず」という言葉を聞いた瞬のたい激痛は、今でも皮膚の奥に微かな記憶として刻まれている。

しかし、私のに悔のはミリもしなかった。

の真をゴミのように踏みにじり、目先の銭のために平然と恩を裏切るような者たちに、本物の富や幸福をにする資格など最初からなかったのだ。

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彼らは自らの欲望という名の毒に呑まれ、自らが掘った奈落の底へと消えっていった。

たい刑務所の独で、失ったもののきさに永に悶え続ける元夫。

誰からも顧みられず、社会の最底辺で孤独に震えながらを待つ元義母。

そして、虚飾の美貌を剥ぎ取られ、に迷った。

彼らはをかけて、自らの犯した罪のさと、捨てったものの途方もない価値をいることになるだろう。

「おじ様……私は、もう迷いません」

私は胸元に輝く純の鳳凰章にそっと指先を触れ、窓の向こうの青空に向かって静かに誓った。

私のには、誰にも依せず、何者にも脅かされることのない、私自の絶対な力で切りく未来が広がっている。守るべき社員たちがいて、支えるべき社会があり、受け継ぐべき誇りがある。

孤独を恐れる季節は、もう完全に終わったのだ。

の凛とした澄んだが、総帥の広な空を黄に染めげていく。

そのの真んで、私は自らの玉座に君臨する揺るぎない誇りを胸に、しく始まる偉なる航へと向けて、力く顔をげた。

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