"110億円を相続した妻を捨てた夫――30億円の誤算" 第6話
曜の暗転
けて曜の午分。神堂タワーの最階総帥には、私と弁護士、塚監査部、そしてメガバンクの法統括役員が集結していた。
に広がる京のは、通勤ラッシュのの列が然と流れている。その静寂ので、壁に掛けられたアンティークの振り子計が、コチ、コチと容赦なくを刻んでいた。
「美桜総帥、もなく午を迎えます」
先がく告げた。
「ええ。彼らがに入れたはずの虚飾の楽園が、崩壊を始めるですね」
計の針がを指した瞬、メガバンクの役員が元の専用端末を操作した。
『ゴーダプレシジョン名義の全座、支払止および制回収処理、執完』
画面に表示された徹な文字列。それは、の富に寄して踊り狂っていた化たちに対する、最初の鉄槌だった。
その頃、都内のゴーダプレシジョン本社では、阿叫喚の獄絵図が幕をけていた。
塚部がセットアップした音声モニターから、社内のパニックを伝える々しい音声がスピーカーを通じて流れてくる。
『しゃ、社! 変です! 今すぐ会社に来てください!』
経理部の引き裂かれるような鳴に対し、話の達也はまだ寝ぼけたような、嫌の良さそうな声で応じていた。おそらく、麗のマンションのベッドので話を取ったのだろう。
広告
『あぁ? なんだよ朝から騒々しいな。言っただろ、今は麗の親父さんと会があるから、午から社するって』
『そんな悠なことを言っているじゃありません! 先ほどメインバンクから通があり、当社の信用保証億円が突如として全額解除されました! 今、本の回収担当者が数名で乗り込んできて、全融資の即括返済を迫られています!』
『は……? し、信用保証が解除……? 何を言ってるんだ、そんなのあり得ないだろ!』
達也の掠れた声から、瞬にして余裕が吹きんだ。
『それだけではありません! 全座がロックされ、円も資をかせなくなりました! 本午決済の千万円の形が、このままでは確実に落ちません! 渡りになります! 倒産してしまうんです!』
『ふ、渡りだと!? ふざけるな! 俺は優良企業の社だぞ! 何かの違いだ、俺が今すぐへって鳴り込んでやる!』
ガチャン、と乱暴に受話器が叩きつけられる音が響き、音声が途切れた。
私はえ切った茶のカップにをつけ、静かに目を細めた。
「鳴り込んで何とかなるとっているところが、実にあの男らしい浅はかさですね」
「様でございます」先が徹に言った。「はでく組織ではありません。契約に基づき、担保を失った融資先から械に資を回収するだけです。
広告
交渉の余など、最初からミリもしません」
午になり、事態はさらに加速度をつけて破滅へと向かっていった。
へ乗り込んだ達也は融資担当役に面会すら拒絶され、払いをらった。錯乱した達也は、救いを求めて再婚相である麗の父親のオフィスへ駆け込んだが、億円の負債を抱えて座を凍結された企業に用はないと、受付で酷に追い払われたという。千万円の持参どころか、話の着信すら拒否されたのだ。
さらに、モニターの画面には、麗が暮らしていたタワーマンションのエントランスの防犯カメラ映像が映しされていた。
そこには、巨なブランド物のスーツケースをつ引きずり、逃げるようにタクシーへ乗り込もうとする麗の姿があった。駆けつけた達也が必に彼女の腕に縋り付いたが、麗は履いていたハイヒールで達也の脛を蹴りげ、酷に言い放った。
『会社のが尽きた無文のオッサンに用なんかないわよ! 寄らないで、負け犬!』
タクシーは無にも急発し、達也はアスファルトのに無様に転がり落ちた。
の切れ目が縁の切れ目。のを横領して買い与えたなど、その程度の脆い砂細に過ぎなかったのだ。
そして、運命の午。
ピピッ、という無質な子音とともに、塚部のモニターに赤いアラートが表示された。
『形交換所より通。ゴーダプレシジョン、第回渡り処分確定』
の歴史を持つ会社が、音をてて完全に息の根を止められた瞬だった。