"義妹が奪った父のベンツ――事故の電話で義母が絶句" 第5話
治療しないで
話を握る子の横顔には、配しているの表がありませんでした。
むしろく待っていたらせがようやく届いたような、張り詰めたものがほどけた顔をしていました。
「事故って……どのくらいひどいんですか?」
話の向こうの相が何か答えています。
子はし黙ったあと、声を潜めました。
「識はあるんですか?」
私は階段のでじっと聞いていました。
黒いベンツ。
運転していた女性。
病院。
普通に考えれば、美穂です。
今朝、に乗ってていったのは美穂なのですから。
それなのに子は、なぜ私がにいるかどうかを話で確認したのでしょう。
さらに解なことがありました。
子は今、事故に遭ったのが誰なのか度も確認していません。
それどころか、相が「運転していた女性」と言っただけで、すべて分かったように話をめています。
やがて義母はリビングのソファへ腰をろしました。
「族の方に来ていただきたい?」
しが空きました。
「私はきません」
を疑いました。
話の向こうが何か聞き返したのでしょう。
子は苛ったように声をきくしました。
「だから、かないって言ってるでしょう」
私はポケットの録音に触れました。
赤いランプは点いています。
「治療が必なら、本に確認してください。
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私は関係ありませんから」
もう度、相が何か説しました。
すると子はついに本性を剥きしにしました。
「そんな女にい治療費を使わないでちょうだい」
私は凍りつきました。
「どうせの言うことも聞かない女なのよ。運転した女は治療しなくていいですから」
話の向こうが急に静かになったようでした。
子はさらに続けました。
「助かったって、また族に迷惑をかけるだけでしょう。本の責任なんだから放っておけばいいのよ」
。
私はこのと同じで暮らしてきました。
をしたには病院へ付き添い、腰を痛めたには毎買い物を代わり、誕には本が忘れていても好物を用しました。
それでも私が事故に遭ったとった瞬、このが最初ににしたのは「治療しなくていい」でした。
しいというは、議なほどありませんでした。
ただ、胸の奥がたく澄んでいきました。
私はもう、この族に何も期待していない。
そのことをはっきり理解しました。
子は話を切ろうとしていました。
私は階段をりました。
段。
また段。
スリッパの音がリビングに響きました。
子が嫌そうに振り返ります。
そして私を見た瞬、その顔からすべてのが消えました。
受話器を握ったまま、目を見いています。
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「……え?」
私は最の段をりました。
「お義母さん」
子の唇が震えています。
「な、なんで……」
「どうしたんですか?」
「あなた……」
受話器の向こうからまだ声がしています。
私は子の目を真っすぐ見ました。
「事故に遭ったんじゃ……」
義母がようやく絞りしたその言葉で、私は確信しました。
このは最初から、事故に遭うのが私だとっていた。
偶然ではありません。
何かをっていた。
私は歩づきました。
「お義母さん」
できるだけ静かな声で尋ねました。
「さっき、誰を『治療しなくていい』って言ったんですか?」
子のから受話器が滑り落ちました。
にぶつかり、鈍い音がします。
それでも話は切れませんでした。
受話器の向こうから、男性の声が聞こえました。
『ご族の方、聞こえますか?』
私はの受話器を拾いました。
「はい。森田由美です」
話の向こうで、相がし戸惑ったようでした。
『森田さん……ですか?』
「はい」
『では、確認させてください。事故両の所者の森田由美さんご本ですね?』
「そうです」
子が私を見ています。
顔はのようにくなっていました。
話の相は続けました。
『先ほど搬送された女性は、佐藤美穂さんと名乗っています』
子の膝が崩れました。
私は受話器を握ったまま、静かに義母を見ろしました。
事故に遭ったのは、私ではない。
あなたの娘です。
そしてたった今あなたは、自分の娘ともらずに「治療しなくていい」と言ったのです。