"「お前のために断ってやった」母の仕送りを7年捨て続けた夫" 第12話
庭の平穏と真帆の健康を守るためにも、連絡はに、回、お正やお盆の節目だけにしていただけませんか」
それはお願いの形を取った、酷な通達だった。
母の目が泳ぎ、唇が震えている。 まるで、裁判官から「娘との接触禁止」を言い渡された被告のような顔だった。
夫は満そうにさく頷き、お茶をすすった。 すべてが自分の惑通り、理に片付いたと確信したように。
そのだった。
カツン、と乾いた音が茶のに響いた。
父が、卓のに箸を置いた音だった。
父はゆっくりと顔をげた。 く刻まれた眉の皺の奥から、鋭いが夫を射抜いていた。
「……拓君」
をうような、くい声だった。
「はい、お義父さん。何でしょうか」 夫はまだ、優等の笑みを張り付けたまま応じた。
「おは、娘が嫁にったら、親子の縁まで指図する権利がおにあるとってるのか」
夫の眉が、わずかにピクリといた。 だが、元の笑みは消えない。
「縁を切るなんて、そんな袈裟なことは言っていませんよ。ただ、物事にはケジメと分寸が必だという話です」
「ケジメだと?」
「ええ」
夫は悪びれる様子もなく、むしろ相の無を憐れむような調で言った。
「真帆はもう、川のなんです。田の娘であるに、川拓の妻なんですよ。戸籍もしく作り、僕たちの庭のルールで暮らしているんです。
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いつまでも田舎の実のやり方やに縛られて、こちらの活リズムを崩されるのは困るんです」
「拓君」
父の声が、段とくなった。
「真帆が川のに入ったからって、俺たちが産んで、育ててきた娘であることに変わりはない。親が娘をい、娘が親をう気持ちまで、おの『庭のルール』とやらに従わせなきゃならんのか」
「従わせるというか、それが社会な常識でしょう」
夫はとうとう、わずかに苛ちを滲ませて息を吐いた。
「お義父さんたちも、もういいおなんですから、子れしてください。娘に頼るんじゃなくて、自分たちの老は自分たちで完結させるのが、親としての責任じゃないですか? にも申しげましたよね。真帆の活の責任は僕が持つから、余計なしはしないでくれと」
父の拳が、畳のでくなるほどく握りしめられた。 悔しさとりで、父の全が震えていた。 い父親が、代の男に、自分ので、ここまで見され、侮辱されている。
そして、その元凶は――この男を「優しい夫」だと信じ込み、波をてないことばかりを選んできた、私だった。
「……もういい」
私のから、乾いた声が漏れた。
夫が怪訝そうにこちらを振り向いた。 「真帆?」
私は座布団からちがり、夫を見ろした。 膝の震えは、もう止まっていた。
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臓の奥が、静かに、激しく燃え盛っていた。
「真帆、何突っってんだよ。座れよ」 夫が眉をひそめ、い声で言った。ヅラを剥がしかけた、いつもの夫の目。
「拓さん」
私はまっすぐに夫の目を見据えて言った。
「私、あなたとは帰らない」
夫の表が、瞬で凍りついた。
「……は?」
「に積んできた荷物も、持って帰って。私はここに残る」
「お……」
夫の顔から、完全に営業スマイルが剥がれ落ちた。 剥きしの苛ちが、そのった顔を醜く歪める。
「お、親ので何言ってんの? 冗談だろ? 曜だぞ。仕事はどうすんだよ」
「を取る。会社にはもう連絡した」
「勝なことすんなって言っただろ!」
夫が鳴り、バンとこたつの板を叩いた。 湯呑みが倒れ、温かいほうじ茶が畳のにこぼれた。 母が「ひっ」とい鳴をげてを竦める。
「おさ、いい加減にしろよ! 俺がわざわざ阪からばして迎えに来てやって、までげて丸く収めようとしてやってるのに、何様なんだよ! たかが漬物の箱つで、どこまでつけがれば気が済むんだ!」
「たかが漬物じゃない」
私の声は、驚くほど静かだった。 鳴り返す気も起きなかった。ただ、この男の底の浅さと傲さが、れで仕方がなかった。
「あなたは私の親のを殺したの。そして、私の尊厳も踏みにじった。私を『川の』として管理して、自分の都のいいように飼い慣らそうとした」
「管理だぁ? おのためをってやってきたことだろうが!」