"「お前のために断ってやった」母の仕送りを7年捨て続けた夫" 第6話
として切り捨てたかっただけなのだ。
トラックは細い坂を登り、昔と変わらないトタン根の母のに止まった。 敷の奥、母と渡り廊でつながった平のれが見える。 根のトタンが部剥がれ、ブルーシートが痛々しく被せられていた。
玄関の引き戸をけると、の向こうから、すりの音が聞こえてきた。
「真帆か」
奥からてきた父を見て、息が止まりそうになった。 いつも無で、材を担いでは頑丈な背を見せていた父が、腰をく折り曲げ、杖を突いてっていた。 作業着のからでもわかるほど、肩の周りが削げ落ちている。
「お父さん……」
「わざわざくまで、すまんな。……拓君は、緒じゃないのか」
父の目は、どこか警戒するように私の背の空を泳いでいた。 歓迎されていないわけじゃない。 女婿の嫌を損ねていないか、娘がられていないか、そればかりを気に病んでいる目だった。
「……うん。拓さんは張だから。私で、れの片付けに来たの」
「そうか。……無理せんでいいからな。あそこは埃っぽいから」
父はそれだけ言うと、力なく笑って、居のこたつへと戻っていった。 その頼りない歩き方を見るだけで、胸が抉られるように痛かった。
昼過ぎ、母に案内されて裏のれへ向かった。
引き戸をけると、埃と古い材の匂いがを突く。
広告
隙が吹き抜ける畳の板のには、私がまで使っていた製の学習机が、ぽつんと置かれていた。 壁際には、段ボール箱が几帳面につ、積みねられている。
「をつけてないのよ」
母が、軍をはめながら言った。
「の、台で漏りしたにね、濡れちゃいけないとって、机ののものを箱に移しただけ。……拓さんには『処分業者を配するから、そのまま置いておいていい』って言われたんだけどね。どうしても、あなたの通信簿や、賞をもらった絵を、赤のにゴミ袋に放り込まれるのが忍びなくて」
積みがった段ボールの番をけた。 学の卒業文集。 絵の具セット。 友達と交換したの束。 の制のボタン。
どれも、になった今の私には、何の役にもたないものかもしれない。 夫の言う通り、「過の遺物」で「ガラクタ」なのかもしれない。
でも、ここにあるのは、私が「川真帆」になるに、確かにここできて、されていた証拠だった。 それを、あのは度も見に来ることすらなく、「処分しろ」とに命じようとしていた。
「お母さん」
私は埃の積もった机を指で撫でながら、振り返った。
「聞かせて。……今まで、どれくらい荷物を送ってくれてたの?」
母は困ったように眉をげ、線を泳がせた。
「もういいじゃない、そんなこと。
広告
届かなかったものは、戻ってきたんだから。所のに配ったり、お父さんとでべたから、無駄にはなってないのよ」
「よくない!」
わずい声がた。 母が肩をびくっと震わせる。
「よくないよ、お母さん。私、らなきゃいけないの。自分が、何を見落としてきたのか、全部教えて」
私の目を見て、母は観したようにさく息を吐いた。 そして、エプロンのポケットから鍵を取りし、学習机の鍵のかかる番の引きしをけた。
そこからてきたのは、冊のいB5サイズの学ノートだった。
表には、黒いマジックで『真帆へ』とかれている。
「……何、これ?」
受け取ったノートをいた瞬、私の呼吸が止まった。
ページ目から、びっしりと付と文字が並んでいた。
『 根本、菜玉、米キロ、野沢菜漬け。ヤマト便にて発送。伝票番号〇〇〇〇』 『 連絡票の連絡なし。保管期限切れのため返送、と営業所より話あり。受取拒否の扱いとのこと。送料千百円』 『 拓さんに話。真帆が最仕事で帰りが遅く、自炊をしないので野菜が腐ってしまうとのこと。今は事連絡なしに送らないでほしいと釘を刺される』
ページをめくる。
『 真帆の好きな干し柿、編みの靴。宅急便にて発送』 『 受取拒否にて返送。
靴だけでも受け取ってもらえないか拓さんに頼むが、「のの物を減らしている最なので困る」