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"「お前のために断ってやった」母の仕送りを7年捨て続けた夫" 第5話

宮発、野きの陸幹線。 の朝、番い便の指定席を迷わず押した。

暗い窓ガラスに映る自分の顔は、ひどく青ざめていたけれど、目だけは議なくらい冴え返っていた。

宮駅のホームに滑り込んできた陸幹線のドアがいたとき、たい朝の空気が頬を打った。

元にあるのは、着替えを詰めたさなボストンバッグひとつ。 夫の拓からは、昨夜通話を切ったあと、度も連絡はない。

『勝なことすんなよ』 『迎えになんてかないからな』

の奥で、吐き捨てるようなあのの声がリフレインしていた。 結婚して。 夫の嫌を損ねないこと、波をてないことばかりを優先してきた。 あのが「狭いから」「無駄だから」と言えば、それに従うのが賢い妻の務めだと自分に言い聞かせてきた。

だけど、幹線の座席にくを沈めた瞬、胸の奥底から込みげてきたのは、悔ではなく、鉛のようにい焦燥だった。

母は、どんな顔をしてあの突き返された荷物を受け取っていたんだろう。 度や度じゃない。 配達員は「何件か」と言った。 丹精込めて漬けた野沢菜を、畑から抜いてを落とした根を、娘にべさせたいと箱に詰めた母のを、夫は玄関先で無質に追い返していたのだ。

窓のの景が、埼玉のの並みから、崎を過ぎ、険しい々のい緑へと移り変わっていく。

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軽井沢を抜けると、空の青さが段とくなった。

田駅でしなの鉄に乗り換え、さらにガタゴトと揺られること分。 りった無駅のホームには、懐かしいとの匂いが満ちていた。

改札をると、ロータリーの隅にまった見慣れた軽トラックのに、母の姿があった。

「……お母さん」

りにづくと、母はこちらに気づき、さくを挙げた。 のカーディガンに、履き古したスニーカー。 最に会ったのはいつだったか。もういせない。 記憶のの母よりも、背がずっと丸くなり、髪が増えていた。

「真帆。……本当に、で来たの?」

母の最初の言葉は、堵ではなく、怯えを含んだ慮だった。 娘が実に帰ってきたというのに、放しでぶことすらできないのだ。

「うん。。……ごめんね、急に」

「ううん。いいのよ。……朝ごはん、べてないでしょう。の、効かせてあるから」

軽トラックの助席に乗り込むと、母はダッシュボードのから、アルミホイルに包まれたものを差ししてきた。 のひらに伝わる、確かな温もり。

「お噌のおにぎり。好きだったでしょう」

包みをくと、ばしい焦がし噌の匂いがをくすぐった。 かじると、喉の奥がきゅっと締まって、涙がこぼれそうになるのを必でこらえた。 こんな当たりの温もりを、私はもざけていたのだ。

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「……お父さんは?」

「にいるわ。腰を痛めてから、あんまりいは歩けなくてね。今も駅まで迎えにくって言ってたんだけど、に乗るのも苦労だから、留守番してもらったの」

母は何気ない調でハンドルを握っている。 けれど、その横顔には、私がらないの疲れが刻み込まれていた。

「なんで……もっとく教えてくれなかったの? お父さんの仕事のこと」

内が、静かになった。 ウィンカーのカチカチという音だけが響く。

「……真帆に配かけたくなかったのよ」

母はを見つめたまま、ぽつりと言った。

「京で懸命働いて、向こうののお義母さんや親戚付きいもあるのに、実の寄りの愚痴なんて聞かされたら荷になるでしょう? それに、拓さんからも言われていたしね」

まただ。 また、夫の名がてくる。

「拓さんに、なんて言われてたの?」

「真帆は責任がいから、実のことを聞くと無理して仕送りしようとしたり、仕事をセーブして野に通おうとしたりするから、らせないでくれって。……拓さん、あなたの体を本当に配してくれていたのよ」

喉の奥が、からからに渇く。

違う。 あのは私を配したんじゃない。 私のも、私のおも、私の識も、すべて「川の」だけに向けさせておきたかっただけだ。 私の実を、ただの「とがかかる厄介な過」

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