"入籍三日目に渡された「毎月30万」の振込先" 第15話
「万もまけてくれたんだぞ? これなら、おの取り万から万しても、万残るだろ? 俺たちの活費だって、俺の料とわせれば余裕で回る。母さんも『万でいいなら、輔のガレージの費と最限のしにはなるから納得する』って言ってくれたんだ」
自分のを疑った。
万もまけてくれた? 納得する?
この男は、本気で自分が妻を救う英雄だとでもっているのだ。 の財布から毎を毟り取る為そのものが異常であることに、ミリも気づいていない。 万の盗が、万に減額してやったから謝しろと求してきているのと同じだ。
私の全の毛穴から、スッと体温が抜けていくのをじた。
「亮太」
私はマグカップを見つめたまま、静かに問いかけた。
「その万円、誰が誰に約束したおなの?」
「え? だから、俺が母さんに……」
「じゃあ、あなたが自分で払いなさいよ」
亮太の笑顔が、ピキリと固まった。
「……は?」
「ハリアーを売れば、ローンの万が浮くわよね。あなたの取り万から、その万円を実に振り込めばいいじゃない。どうして、私のおからす提の話になってるの?」
「な……なんでそうなるんだよ!」
亮太の声が裏返り、元の苛ちがボロボロと漏れしてきた。
「夫婦だろ!? 俺がをげて、母さんに頼み込んで、万も譲歩させたんだぞ!? なんでおは円も痛みを分かちおうとしないんだよ! しは歩み寄るって気がないのか!?」
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「歩み寄る?」
私は笑を浮かべた。
「騙し討ちで背にナイフを突き刺しておいて、『ナイフを浅く刺し直してやるから痛みを分かちえ』って言われて、誰がんで頷くのよ」
「菜穂、お……っ!」
「万が万になったから何? 問題は額じゃないの」
私はドアの隙から、亮太の瞳をまっすぐに見据えた。
「あなたが、私を騙したことよ。結婚するに『親には仕送りしていない』と嘘をつき、居のために預けた万から万を無断で横流しし、入籍届をした途端に集を始めた。そして、問い詰められたら『結婚に言ったら結婚してくれなかっただろ』とき直った」
亮太の顔から、急速に血の気が引いていく。
「あなたというへの信用が、完全にゼロになったの。そんな相と、誰がこれからの何を共にできるとうの?」
「たかが……たかがの問題だろ!!」
亮太がついに理性を失い、廊に響き渡る声で鳴り散らした。 目を血らせ、ドアを掴んで揺さぶる。
「って、おは本当に汚い女だな! たかが万ののために、に度の結婚を捨てる気か!? 婚歴がついた女が、この先どんな目で見られるか分かってんのかよ! 俺がこんなに妥協してやってんのに、調子に乗るんじゃねえぞ!!」
汚い言葉が、唾とともにんでくる。 そのあまりに見苦しい姿に、かつてこの男に抱いていたわずかなの残滓すら、完全に々に砕け散った。
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「ええ、捨てるわ」
私は澄み切った声で、はっきりと言い放った。
「こんな舟、秒だって乗っていたくないもの」
私はスーツのポケットから、枚のい名刺を取りした。
『佐伯総法律事務所 弁護士 佐伯律子』
チェーンをし、ドアをわずかにけて、その名刺を亮太の胸ポケットに正確に差し込んだ。
「……ッ、なんだよこれ」
「私の代理。これからの連絡は、すべて佐伯先を通してください。勝に流用した万円の返還請求、川のマンションの解約違約の分担、そして協議婚の条件について、面でお送りします」
「り、婚……? 本気で……」
「度と私のに現れないで。次にここに来たら、即座に通報します」
バタン。
ドアを完全に閉め、鍵をに回した。 ガチャリ、とチェーンをかける属音が、の関係の完全な終焉を告げる図のように、たく響き渡った。
の廊で、亮太がドアノブをガチャガチャと狂ったように回す音がした。 「菜穂! おい、菜穂! 冗談だろ!? けろよ! 菜穂!!」
けれど、その叫び声はもう、私のの面を波たせることすらできなかった。
私はに置かれた袋を見ろした。 フランフランのペアマグカップ。 度も使われることのなかったその陶器を、私はゴミ箱の横に、静かに置いた。