"入籍三日目に渡された「毎月30万」の振込先" 第10話
義母の子だった。
血の気が引くよりも先に、徹な考がを支配した。 川からここまで、でわずか数駅。 亮太と話で言い争っているに、実から乗り込んできたのだ。
私は息を潜め、チェーンがかかっていることを確認してから、ドアをわずかにセンチだけけた。
隙から見えた子の顔は、りと焦燥で鬼のように歪んでいた。 いつも綺麗にセットされている髪混じりのパーマは乱れ、物のカーディガンを羽織った肩が激しくしている。
「菜穂さん! あなた、亮太に何を言ったのよ!」
子はドアの隙にをねじ込もうとしてきた。
「輔のところまで押しかけて、あの子を脅したんですってね!? 族の結束を壊すような真似をして、タダで済むとってんの!?」
「警察を呼びますよ」
私が平然と言い放つと、子は息を呑み、目を剥いた。
「け、警察ですって……!? 義理の母親に向かって何を言ってるのよ! 恥をりなさい!」
「夜のにののドアを叩き割らんばかりに連打して、声をすのは派な迷惑防止条例違反です。所迷惑ですから、今すぐお引き取りください」
「ですって!? あなたは宮本の嫁でしょうが!」
「まだ、です」
私はドアの隙から、たい線で子を見据えた。
「婚姻届をして。実質な共同活も始まっていません。
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そして、婚姻のな詐欺為について、こちらはすべての証拠を押さえています」
子の顔が、サーッと青ざめた。
「さ、詐欺……? 何を証拠だなんて袈裟な……!」
「輔さんのガレージの材の領収。納品と額。それから、さっき輔さんと亮太が自供した録音データ。全部保してあります」
子の唇が刻みに震え始めた。 昨夜までの勝ち誇った態度は、見るもなく崩れっていた。
「な、菜穂さん……待ちなさいよ。話せば分かるじゃないの。ねえ? 亮太も言葉がりなかったのよ。悪気はなかったの。輔だって、が軌に乗ればちゃんと返すつもりで……」
「話しいなら、に、正式な所でいます」
私は子の見苦しい言い訳をピシャリと遮った。
「ここには入れません。お引き取りください」
「……っ! なによ、その態度は!」
追い詰められた子は、再びヒステリックに声を荒らげた。 所の部のドアがギイとき、誰かが様子を伺う気配が廊に漂う。 子は世体を気にしたのか、忌々しそうに舌打ちをすると、ドアの隙に向かって指を突きつけてきた。
「いいわよ! そこまで言うなら、全員で黒つけましょうじゃないの!」
「全員?」
「今週の曜の昼、実に来なさい! 亮太の親父も、輔も、亮太も、全員揃えて待ってるわ! 族会議よ! そこであなたがどれだけ勝で恩らずなことを言ってるか、親父ので同じように言えるか試してあげるわ!」
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子はそれだけ喚き散らすと、肩をらせてエレベーターホールへとっていった。
バタン、とドアを完全に閉め、鍵をに回す。 部のに、再び静寂が戻った。
族会議。 男の嫁を吊しげ、数の暴力と「制度」の霊でねじ伏せるための、代な茶番劇。
「望むところよ」
私は呟いた。
部の隅に置いた仕事用のブリーフケースをける。 には、会社のオフィスで印刷してきた数枚のA4用。
『宮本関連・収支および資使途覧』 『居初期費用における使途(万円)返還請求(案)』 『宮本亮太・菜穂 世帯収支シミュレーション(破綻予測)』
すべての数字は、エクセルで完璧に計算され、客観な証拠資料の番号が振られていた。 論など文字も入っていない。 あるのは、徹な現実の収支と、契約違反の事実だけだ。
逃げるつもりはない。 向こうが全員で囲い込んで私を屈させるつもりなら、私はその全員の目ので、彼らが拠ってつ「族」という名の欺瞞を、数字の鉄槌で叩き潰すだけだ。
ブリーフケースのマグネットホックを、パチンと鳴らして閉じた。
決戦は、曜。 私は、決して引きがらない。
曜の正午。 埼玉の宅に佇む宮本の実は、湿ったと古い造特の、カビの混じった匂いが漂っていた。
引き戸の玄関をけた瞬から、苦しい空気が肌にまとわりつく。