"入籍三日目に渡された「毎月30万」の振込先" 第9話
その夜、私は蕨の部に戻り、たいペットボトルのを気にみ干した。
計の針は午を回っていた。 スマートフォンのバイブレーションが、テーブルので狂ったように震えす。
画面には『亮太』の文字。
私は迷うことなく、通話ボタンを押した。 最初から録音アプリは起してある。
「もしもし」
『おい! やっとたな!』
受話器の向こうから、苛ちを隠そうともしない亮太の声がんできた。
『お、今輔のところにったらしいな! 体何吹き込んだんだよ! 輔から話があって『菜穂さん、なんか様子がおかしかった』って言ってきたぞ! 余計なことペラペラ嗅ぎ回ってんじゃねえよ!』
「嗅ぎ回る?」
私はく、え切った声で返した。
「何も嗅ぎ回ってないわよ。ただ、輔さんのから本当のことを教えてもらっただけ」
『本当のことだと……?』
「半、私に『親父は自してるから、仕送りは円もしてない』って言ったわよね」
沈黙が落ちた。 受話器の向こうで、亮太の呼吸が微かに乱れたのが分かった。
「あれ、全部嘘だったのね」
『……何を言ってんだよ』
「輔さん、全部教えてくれたわよ。お義母さんが『亮太の嫁は稼ぎがいいから、結婚させて毎万巻きげれば、輔のの賃も維持費も全部賄える』って言ってたって。プロポーズするから、宮本全員で私の料と貯をあてにしてたんでしょう?」
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『あ、あいつ……! 余計なこと喋りやがって……!』
亮太がわず漏らした舌打ちの音が、はっきりとに届いた。 言い逃れすらできない決定な反応だった。
「どうして嘘をついたの?」
私は静かに、けれど逃げを塞ぐように問い詰めた。
「結婚する、どうして正直に言わなかったの? 『弟の起業資と活費のために、おの料から毎万してくれなきゃ困る』って、どうしてプロポーズのに言わなかったの?」
『そんなの……!』
亮太が叫んだ。 話越しでも分かるほど、激昂し、取り乱した声だった。
『結婚にそんなこと言ったら、お、結婚しなかっただろ!!』
臓の奥が、完全に凍りついた。
言った。 ついに、自らので状したのだ。
「……そうね」
私は乾いた唇で、呟くように言った。
「当たりでしょう。誰がそんな寄虫みたいな庭に、自分のと財産を差しすために嫁ぐのよ」
『寄虫だと!? ふざけんなよ菜穂!』
プライドを傷つけられた亮太が、受話器が割れんばかりの切り声をあげた。
『族を助けるのがそんなに汚いことかよ! おにはってものがないのか!? たかが万だろ! おの貯と料があれば、屁でもない額じゃないか! 俺の族を救うためにをして、何が満なんだよ!』
「たかが万?」
私の声は、自分でも驚くほど静かだった。
「私の取りは万よ。
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ヶ、毎朝から晩まで働いて、理尽なクレームにをげて、神経をすり減らして稼いだおの全額よ。それを『たかが』で済ませるようなに、円だって渡すわけないでしょう」
『お……っ、本気で言ってんのか? たった数で婚なんて、世が許すとってんのかよ! 入籍してで嫁にてかれたなんて、俺の会社の同僚にられたらどうなるとってんだ! 親戚に恥をかかせる気か!』
「るわけないでしょ。恥をかきたくないなら、最初からのを当てにして見栄を張らなきゃよかったのよ」
『おい! 待て、菜穂! 切るな――』
私は通話を切り、亮太の番号を即座に着信拒否に設定した。
静まり返った部。 スマートフォンの画面を見つめながら、私はく息を吸い込んだ。
「結婚に言ったら、結婚しなかっただろ」
あの言葉。 あれこそが、この婚姻のすべてだった。 最初から騙す気だった。 婚姻届という法な枷を嵌めてしまえば、世体と同調圧力で、女は逃げられなくなるとを括っていたのだ。
だが、甘く見ないで。 世体? 恥? そんなもののために、私のこれからの、をドブに捨てる気なんて、微もない。
その、インターホンが激しく連打された。
ピンポーン! ピンポーン! ピンポーン! ドンドン、ドンドン!
「菜穂さん! けなさい! 菜穂さん!!」
ドアを拳で叩く音とともに、廊に響き渡る聞き覚えのある切り声。