"入籍三日目に渡された「毎月30万」の振込先" 第5話
「……よかった」
さな声が、誰もいない部にぽつりと響いた。 たいにをつき、きく息を吐きす。 全の筋肉が張り、奥歯がガタガタと震えていた。
恐怖ではない。 氷を踏むようないで、最悪の罠から髪で抜けしてきたことへの、遅れてやってきた戦慄だった。
もし、旧居を完全に引き払っていたら。 もし、貯の全額を亮太に教えていたら。 もし、あの夜「私がすれば」と泣き寝入りしていたら。
私は、宮本のづるとして吸い尽くされ、最はボロ雑巾のように捨てられていたはずだ。
その、ポケットのでスマートフォンがけたたましく震え始めた。
画面を見る。 亮太からではない。
『宮本子』
義母からだった。
度きく呼吸をし、通話ボタンを押す。 同に、画面をタップして通話録音のアプリを起させた。
「もしもし」
『菜穂さん!? あなた、体どういうつもりなの!?』
スピーカー越しでもを塞ぎたくなるような、ヒステリックな絶叫が部に響き渡った。
『亮太から聞いたわよ! 朝から夫を鳴りつけて、荷物をまとめててったんですって!? たったでなんて、代未聞よ! 親戚に恥を晒す気なの!?』
「お義母さん」
私は淡な声で遮った。
「亮太から何を聞いたかりませんが、私はをしたのではありません。婚の資の横領と、当な銭求について、納得のいく説を求めているだけです」
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『よ、横領ですって!? なによその聞きが悪い言い方は!』
子の声がひっくり返る。
『亮太はね、昔から族いの優しい子なの! 母親が困ってるのを見て、息子が持ちのおを面してくれたのよ! 親孝の何が悪いのよ!』
「持ちのおではありません。あれは、居の敷とのために私が亮太に預けた、私の個の貯です」
『夫婦になったんだから、どっちのも同じでしょうが!』
子は悪びれもせず、亮太と寸分違わぬ台を鳴り散らした。
『あなたねえ、医療器の営業事務だか何だからないけど、いいお料もらってるんでしょう!? ボーナスだってしっかりるって、亮太から聞いてるわよ! 嫁が稼いだおを夫のに回すのは、宮本のとして当然の義務じゃないの!』
息が詰まりそうになる。 亮太は、私の収もボーナスの額も、入籍から実に筒抜けにしていたのだ。 「しっかり稼ぐ嫁」という値札をつけて。
「私は宮本の財布ではありません」
私は指先をく握りしめ、言い返した。
「毎万なんてお、絶対に払えません。それから、輔さんの自資とかれていましたが、輔さんは27歳ですよね? どうしてご自分で働いたおで活されないんですか?」
その問いをにした瞬、話の向こうの空気がピキリと凍りついた。
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そして次の瞬、子の声は、それまでのヒステリックなものから、ドスの利いた湿なトーンへと変わった。
『……あなた、輔の悪を言う気?』
「悪ではありません。事実を聞いているだけです」
『輔はね、これから自分のを持つのよ! 昔からが好きで、カーディテイリングの腕はプロ顔負けなんだから! 今は準備で忙しくて、まとまったおが必な期なの! 弟の将来のために兄夫婦が力を貸すのが、族の温かさってもんじゃないの!?』
「弟さんの起業資を、なぜ私が全額負担しなければならないんですか」
『全額なんて言ってないでしょう! たった万じゃないの!』
たった万。 取り万のに対して、それを「たった」と言い切る神経。
『……本当に、げのない娘ね』
子が吐き捨てるように、笑を漏らした。
『結婚はおとなしそうにして、従順でいいお嫁さんだとってたのに。こんなにがめつくて計算い女だったなんてね。いうちに化けの皮が剥がれて清々したわ。こんなことなら、もっと素直で、族を事にしてくれる娘を亮太の嫁にもらえばよかった!』
「ええ、そうしてください」
私はを切乗せずに返した。
「今からでも遅くないといますよ。亮太と婚して、その素らしいお嫁さんを探されたらいかがですか」
『なっ……! なにを気なことを言ってんのよ! 婚なんて、世様が許すわけないでしょう! 傷物に――』