"入籍三日目に渡された「毎月30万」の振込先" 第2話
ブーッ、ブーッ、ブーッ。
無質な振が、板張りのを震わせる。 画面に浮かびがっていたのは、『お母さん』の文字だった。
刻は夜のを回っている。
亮太はためらいもなく画面をスライドさせ、に当てた。
「あ、母さん? うん、今ちょうど話してたとこ」
スピーカーにしなくても、静まり返った部のに義母・子の甲い声が漏れ聞こえてくる。
『亮太? 菜穂さん、ちゃんと納得してくれたの? 来の分、には振り込んでもらわないと困るのよ。輔の方もいろいろ支払いの締めがあるんだから』
臓がねがった。
菜穂さんに納得してくれたの? 支払いの締め?
子の調には、婚夫婦を気遣う慮など微もなかった。 まるで、期通りの入を待ち構える取りてそのものだった。
「あー、ちょっとまだ結婚したてで実湧いてないみたいだけどさ。俺からしっかり言って聞かせるから丈夫。配しないで」
『頼むわよ。男の嫁なんだから、それくらい果たすべき責任でしょう。じゃあ、よろしくね』
通話が切れた。 部に、苦しい沈黙が落ちる。
亮太はスマートフォンをポケットに放り込み、何事もなかったかのようにちがった。
「ほら、母さんも待ってるんだから。にネットバンキングで設定しといてくれよ。俺、朝いからもう寝るわ」
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そう言って、亮太は寝の引き戸をピシャリと閉めた。
残された私は、きのメモを見つめたまま、微だにできなかった。
違う。 これは、ただの価値観の致じゃない。 偶発な婚の喧嘩でもない。
彼らは、私がサインをして『宮本』の姓を背負うのを、息を潜めて待っていたのだ。
計の針が夜を指しても、私の目は冴え返っていた。
暗いリビングのソファにで座り、スマートフォンの青いを見つめる。 画面に表示されているのは、自分の座の入履歴と、亮太とのLINEのトーク履歴だった。
胸の奥を突き刺すような胸騒ぎが、どうしても消えなかった。
子の声。 「来の分、には振り込んでもらわないと困るのよ」 あの慣れきった催促の調。
そしてもうつ、喉に刺さった魚の骨のように引っかかっていた記憶があった。
先の旬――婚姻届をすちょうど週のことだ。 亮太が神妙な顔をして、私の旧居の部にやってきた。
『居の契約と敷、それからを括で揃えるのに、どうしてもなまとまった現が必なんだ。カードの限度額もあるし、旦万貸してくれないか? が届いて領収が揃ったら、俺の料とボーナスでちゃんと按分して精算するから』
あのの亮太は、申し訳なさそうに眉をげていた。
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これからで暮らすを作るための準備。 そう信じて疑わなかった私は、翌の昼休みに会社のくのATMから、亮太の座へきっかり万円を振り込んだ。
LINEの画面をにスクロールする。 履歴ははっきりと残っていた。
『敷との初期費用として50万振り込みました。で領収精算でお願いします』 『助かる! 本当にありがとう! 頼りになるよ、菜穂』
その万円だ。
私はスマートフォンの画面をネットバンキングの細から、居の賃貸借契約の控えの写真へと切り替えた。 引っ越し直、産から送られてきたPDFデータ。
初期費用の総額、約万円。 ……だが、振込期は先のになっている。 そして、リビングに届いているの蔵庫とパナソニックのドラム式洗濯。 搬入伝票に記載された額の計は、約万円。
計、万円。
おかしい。 初期費用とで万かかっているなら、私の万と亮太の自己資をわせれば辻褄がうはずだ。 だが、先ほど寝のクローゼットにあった亮太の類ケースをそっと確認した、のレシートの横に、見慣れない控えが枚紛れ込んでいた。
量販の支払いは、全額「亮太名義のクレジットカードの分割払い」になっていた。 現は円も使われていない。
じゃあ、私が振り込んだ現万円は、どこへ消えた?
血の気が引いていくのが分かった。 指先が氷のようにたくなる。