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"「一緒に浪人」は嘘だった――俺に届いた特待生通知" 第10話

ロビーの対峙と消えた

晩の旬。関区の代表として選された俺たちの研究チームは、京都で催される『全国学先端技術同発表会』へ参加するため、から現のカンファレンスホテルにチェックインしていた。

幹線の移も、ホテルのに集まってのミーティングも、俺たちは発表スライドのフォントサイズつ、質疑応答の定問答つに至るまで、徹底なブラッシュアップをねていた。の本番で相対するのは、全国の旧帝国学や力研究所の精鋭たちだ。瞬の油断も許されない。

午過ぎ、ようやく最終確認を終えた俺は、喉の渇きを覚えて階のホテルロビーにある自販売へ向かった。

エレベーターをり、広々とした理のロビーへを踏み入れた瞬、自ドアのくのソファーから、の女性が勢いよくちがった。

ベージュのトレンチコートを着て、両を固く握りしめた希彩佳だった。

「……優馬」

俺はわずを止めた。目を見張り、周囲を見渡す。そこは京都のホテルだ。京から幹線で以かかるこの所に、なぜ彼女がいるのか。

「お……なんでここにいるんだ」

「直君に聞いたの。優馬たちのチームが、京都のこのホテルに泊まるって……。どうしても、直接会って話したかったから、バイト代崩して幹線乗ってきたの」

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彩佳の顔は青く、目のには濃い隈が浮かんでいた。代の、あの無邪気で自信に満ち溢れていた面はどこにもない。寒さに震える彼女の姿に、ホテルの宿泊客たちが訝しげな線を向けていた。

「直が教えたのか……」

俺はさく舌打ちをした。直に悪気はなかったのだろうが、これほど執拗に追いかけてくるとはっていなかった。

「話なら、LINEで終わったはずだ。は朝番から事な発表がある。帰ってくれ」

「分でいいの! お願い、分だけでいいから座って話を聞いて!」

彩佳はロビーの真んでをげ、すがるように懇願した。これ以ここで騒ぎてられ、チームの先輩や学の関係者に迷惑をかけるわけにはいかない。俺はさく息を吐き、ロビーの隅にある喫茶ラウンジの席を指差した。

「……分だけだ」

テーブルを挟んで向かいって座ると、彩佳はテーブルので両をく握りわせた。指先が刻みに震えている。

「優馬、神君とはもう完全に終わったの。ゼミの単位も落としそうだし、友達もみんな私かられていっちゃった……。私、学に入ってからずっと違ってた。華やかなサークルに入って、領よくやってるつもりだったけど、は空っぽだったの」

「そうか。それはおの問題だ」

俺の突き放すような返答に、彩佳の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちた。

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「あの格発表の、私、本当に最だった! 優馬がどれだけ私のためにを使ってくれたかも考えずに、あんな酷いこと言って……! でもね、私、優馬のことが嫌いになったわけじゃなかったの! 優馬なら絶対にで受かるって、信じてたから……!」

「信じてたんじゃないだろ」

俺は彼女の言葉を、静かに、しかし決定なみをもって遮った。

「おはただ、都のいい具として俺を信じていただけだ。自分が受かれば約束を反故にし、困ったことがあれば真夜でも話をよこし、自分の課題を押し付ける。おが信じていたのは俺というじゃない。『何をされてもらず、文句も言わずに助けてくれる便利な』を信じていただけだ」

「違う……! 私、優馬のことが好きなの! 今度は私が優馬を支えるから! 研究で忙しいならご飯も作るし、の回りのこと何でもする! だから……もう度、のときみたいにやり直そう?」

涙でぐしゃぐしゃになった顔で、彩佳はテーブル越しにを乗りし、俺のに触れようとした。

昔の俺なら、その涙に絆され、そのを握り返していただろう。彼女を傷つけることを極度に恐れ、自分がを被ることで丸く収めようとしていただろう。

だが、今の俺のには、憐憫のはあっても、かつての量は微も残っていなかった。

俺は静かにを引っ込め、膝のに置いた。

「彩佳。俺はおをもうしていない」

その言が落ちた瞬、喫茶スペースの空気が完全に凍りついた。彩佳の呼吸が止まり、涙で濡れた瞳が見かれる。

「う……そ……優馬、あんなに私のこと……」

「のときは好きだったよ。それは嘘じゃない。でも、あの掲示板のでおが笑った瞬、俺ので何かが完全にんだんだ。度んだは、どれだけ言葉を尽くしても度と蘇らない」

俺は伝票をに取り、席をった。

「自分のの穴を、ので埋めようとするな。おを救えるのは、お自しかいないんだよ」

背から漏れた「優馬……!」という絶叫を振り切り、俺はエレベーターへと歩きした。

扉が閉まり、昇していく箱ので、俺はく息を吸い込んだ。

胸の奥にあった最の棘が、音をてて抜け落ちていくのをじていた。

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