"「一緒に浪人」は嘘だった――俺に届いた特待生通知" 第9話
夜の履歴と暴かれた過
コンテストから週が過ぎたの旬。学の研究は、来度の全国会および国際カンファレンスに向けた追加実験の準備で、連夜遅くまでかりが灯っていた。
夜を回り、終のがづいた頃、俺はデスクののノートパソコンをスリープモードにし、荷物をまとめた。机のに置いていたスマートフォンをに取ると、画面に量の通が溜まっていた。
差は、すべて希彩佳だった。
『優馬、お願いだからブロック解除して。事な話があるの』 『話にてくれないなら、今から都科の研究までくよ』
SNSのアカウントをブロックしたため、ショートメッセージ経由で送られてきていた。さらに、数枚に及ぶ画像ファイルが連続で添付されていた。
訝しくいながらファイルをくと、それは代の俺と彩佳のメッセージ履歴のスクリーンショットだった。
『2023/10/14 23:42 彩佳:優馬、数Ⅲの積分の微変化のところ、どうしても解けない!テストだから解き方教えて!』 『2023/10/14 23:45 優馬:わかった。今から解いてノートの写真送るよ』
『2023/11/03 01:15 彩佳:模試の過問、解説読んでも。優馬なら分でわかるでしょ?今から通話できる?』 『2023/11/03 01:17 優馬:いいよ。どこがわからない?』
『2023/12/20 02:08 彩佳:推薦の志望理由、先にダメしされた……もうやだ。
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優馬、直ししてくれないと私学けない』 『2023/12/20 02:12 優馬:丈夫だから。俺が構成案をき直しておくから、彩佳は先に寝な』
画面をスクロールしても、スクロールしても、同じ構図が延々と続いていた。
彩佳が泣き言を言い、無理難題を押し付け、俺が「わかった」「丈夫」「俺がやっておく」と引き受ける。夜、のやり取りも珍しくなかった。そのすべてのにおいて、俺は自分の受験勉や研究を断し、彼女のを解消するために自らのを差ししていたのだ。
画像の番に、彩佳からのい文章が添えられていた。
『昔のトーク履歴、全部見返したよ。……私、今まで本当に気づいてなかった。私が「困った」「助けて」って言うたびに、優馬はいつも自分のことを回しにして助けてくれてたんだね。 私、それが当たりだとってた。優馬はがいいから、しを取られたくらいで困るはずないって、甘えてたの。 でも、神君にチームを追いされて、でゼミの課題をやらなきゃいけなくなって、初めて分かったの。私、のときから何つ自分で解いてなかった。全部、優馬の脳を借りて、自分の実力だと勘違いしてただけだった。 本当にごめんなさい。私が全部悪かったの。お願いだから、度だけでいいから会って話を聞いてほしい』
液晶の青いを見つめながら、俺はい溜め息を吐きした。
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確かに、彼女の謝罪には嘘はないのだろう。初めて自分の無力さをり、に寄り添ってもらっていた々の価値を痛したのだとう。
だが、その謝罪を読んでも、俺の胸に来したのは淡な納得だけだった。
俺が画面に向かって指をらせようとしたその瞬、研究の奥の席から黒田教授がちがり、温かい缶コーヒーを俺のデスクのにコトッと置いた。
「瀬君、まだ残っていたのかね」
「あ、黒田先。すみません、キリがついたので今帰るところです」
黒田教授は鏡の位置を直し、俺の疲れた顔を優しく見つめた。
「君は責任がく、の痛みに敏だ。それは研究者としてもとしても美徳だがね……の課題を自分の責任だと錯覚して背負い込むのは、親切ではなくただの傲だよ」
を突かれたような言葉に、俺は息を呑んだ。
「……傲、ですか」
「そうだよ。はね、自分でつまずき、自分でを払い、自分でちがらなければ、本当のでへむことはできない。が転ばないように先回りしてをどけてやることは、見優しさに見えて、そのの歩く力を奪っているのと同じなんだ。君がこれまで誰かにそうしてきたのなら、それは君自が『必とされること』に依していた証拠でもある」
教授の静かな言葉が、俺のの奥底に眠っていた澱を容赦なく抉りしていった。
俺は彩佳をしていたのではない。彼女に頼られ、謝され、自分の価値を証するために、彼女の自の会を奪い続けていただけだったのだ。そして彼女もまた、そのぬるま湯に浸かり、自ら考えることを放棄していた。
「……先、ありがとうございます。目が覚めました」
俺は缶コーヒーをに取り、々とをげた。
駅へ向かう夜、俺はスマートフォンをき、彩佳への返信を打ち込んだ。
『言いたいことは分かった。でも、会うつもりはない。おがつまずいたのはおのさだし、俺が無理をして支えすぎたのは俺の未熟さだ。過を振り返って謝る暇があるなら、自分の力でその課題を解け。それが、おがこれからのでやるべき唯のことだ』
送信ボタンを押し、そのまま源を切った。夜のたい空気が、肺の奥まで澄み渡っていくようだった。