"無職と笑う夫が盗んだ、私のデザイン" 第12話
「これに名をいて、実印を押してくれ。そうすれば、俺の自宅待は解ける。格も、懲戒免職も免れるんだ。な? 頼むよ美穂、のお願いだ!」
「第条、読んだ?」
私は類を指先で弾いた。
「『紛争がじた、切の責任は甲が負担する』。ナカジマ・フードがもし損害賠償を請求してきたら、その数千万円の負債を、私が個で背負うことになるのよ」
「そんなの形式の文言だよ! 島部だって、そこまで事にする気はないはずだ! 形だけ、会社を納得させるためのポーズなんだよ!」
「嘘をつかないで」
私はたく言い放った。
「あなたは自分が助かるために、私に虚偽の類をかせようとしている。半から許諾していたなんて嘘をついて、もし会社や取引先から訴訟を起こされたら、私を代わりに差しす契約よ、これは」
夫の表が、目に見えて張っていった。 願の笑みが剥がれ落ち、顎の筋肉が引きつる。
「……じゃあ何だ? おは俺を助けないって言うのか?」
「サインはしないわ」
「美穂!」
夫が突然、卓を両で激しく叩いた。 ガチャンと陶器がね、苺のショートケーキが横倒しになっていクリームが皿にべっとりと潰れた。
「お、自分が何を言ってるのか分かってんのか?! 俺が懲戒免職になったらどうなる?! このマンションの賃はどうすんだ?! 世になんて説するんだよ! 『夫が無職になりました』って、おの実の親に胸張って言えんのか?!」
広告
「賃なら、私の稼ぎで払えるわ」
「調子に乗るなよ、たかがフリーランスが!」
夫はちがり、私を指差して声を浴びせかけた。
「たまたま島に気に入られたからって、プロ気取りか?! 俺という正社員の夫がいるから、おは気楽にで絵を描いていられたんだぞ! 誰の信用でクレジットカード作れたとってんだ! 誰のおかげでこので『普通の主婦』として暮らせてたとってんだよ!」
唾がぶ。 歪んだ顔、充血した目、剥きしになった勝な恐怖。
「おは俺の妻だろ?! 夫の危を救うのが妻の役目だろうが! たかが切れ枚にサインするだけで、俺のが助かるんだぞ! それを拒否するなんて、としてがおかしいんじゃないのか?!」
の奥で、何かがプツリと音をてて千切れた。
しみはなかった。 絶望すら通り越していた。
ただ、目のにいるこの男と、同じベッドで眠り、同じ卓を囲んできたという事実が、激しい吐き気を催すほどにおぞましかった。
「正気なのは、私の方よ」
私は子からちがり、夫を正面から見据えた。
「正気だから、自分の技術と名を、あなたみたいなに差しさないの」
「……何だと?」
「あなたが本当に欲しかったのは、私のデザインじゃないわよね。の努力を奪ってでも、自分が優秀だと周りに誇示したいという、その浅ましいプライドだけ」
広告
「黙れ……!」
「私のを返して」
私の静かな声が、夫の荒い呼吸を切り裂いた。
「『パジャマで適当に描いてるだけ』と私を侮辱しながら、裏では私のデータを盗んで世の具にする。追い詰められたらケーキを買ってきて、反省したふりをして、私に罪を擦り付ける類にサインを迫る」
私は類を両で持ちげ、夫の目ので、真んから真っつに引き裂いた。
ビリッという乾いた音が、静かなリビングに響く。
さらにつに折り、つに引き裂く。
片が、夫の元のフローリングにパラパラと散らばった。
「美穂……てめえ……!」
夫の顔が、りで気に変した。 拳を握り締め、今にも殴りかからんばかりに肩をらせる。
私は歩も退かなかった。 たい目で、その拳をまっすぐに見つめ返した。
「殴ればいいわ。そのまま警察を呼んで、のコンプライアンス委員会に診断を提するだけだから」
夫の拳が、空でカタカタと震えた。 殴ることすらできないのだ。 自分の保と世体が何より事なこの男には、暴力を振るう度胸すらない。
私は寝へ向かい、クローゼットからまとめておいたスーツケースを引いて戻ってきた。 玄関へ向かう私の背に、夫の絶叫が突き刺さる。
「待て! てくな! おい! どこへくんだよ!」
背で、ガシャンという激しい破砕音が響いた。