"無職と笑う夫が盗んだ、私のデザイン" 第6話
爪がのひらにい込む痛みを覚えながら、私は朝が来るのをじっと待った。
翌朝、キッチンで湯を沸かしていると、背でい音がした。
起きてきた夫は、昨夜の取り乱した様子をすっかり消しり、どこか落ち着き払ったような顔でダイニングテーブルについた。 その変わりのさに、胃の奥がたくなる。
「美穂、コーヒー淹れてくれ」
いつもの尊な声だった。 私がマグカップを置くと、夫は啜り、わざとらしくさく咳払いをした。
「……昨のことだがな。俺もし言い過ぎたところがあった」
謝罪の言葉など、言も入っていない。 夫は組んだ指をテーブルに乗せ、いかにも『物分かりのいい夫』といった表で私を見げた。
「おのも考えてやったんだよ。するに、筋を通せばいいだけの話だろ?」
「筋……?」
「ああ。島部が騒ぎてたのは、権利関係が社に漏れてるんじゃないかっていうコンプライアンスの懸からだ。だから、おをうちの部署の正式な『部委託デザイナー』として登録してやる」
夫はさも恩恵を与えてやるかのように、胸を張った。
「企画の主導とディレクションは俺。制作実務をおが担当した、という形にする。そうすれば社内でも通りがいいし、島部にも『夫婦脚で作りげた自信作です』と説がつく。
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俺のメンツも保てるし、おも案件の実績になる。悪い話じゃないだろ?」
あまりの図々しさに、言葉を失った。
のデータを夜に盗みし、自分の柄として提しておきながら、追い詰められた途端に「請けとして使ってやる」と言いしたのだ。
「……契約条件は?」
私がく尋ねると、夫は待ってましたとばかりに角をげた。
「注費として、万円ほど社内決済で回してやるよ。どうせ活費は俺がめにしてるんだから、形だけで分だろ。その代わり、今の修正指示は全部俺を通せ。納品データの著作権も、すべてうちの会社に譲渡する契約にサインしてもらう」
「万円?」
喉の奥で、乾いた何かが弾けた。
『季の卓』は、ロゴタイプ、パッケージ種、POP、ブランドガイドラインまで含めた総設計だ。 デザイン業界の適正相なら、どんなにく見積もっても百万円はらない。
「冗談でしょう。私の半分の労働を、万円で買い叩いて、権利まで奪うつもり?」
「買い叩くだと? 調子に乗るなよ!」
夫がテーブルを叩いた。 マグカップのコーヒーが揺れ、茶い沫がいテーブルクロスに散る。
「おがでWebに絵を転がしてたって、円にもならなかったんだぞ! 俺が営業としてナカジマ・フードっていう板案件に結びつけてやったんだ! 誰の力でそのデザインが世にるとってんだよ!」
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「あなたの力じゃない。島部が認めたのは、私のデザインそのものよ」
「答えするな!」
夫はちがり、私をから見ろした。
「なんてどうせ同じ財布に入るんだよ! 俺が今期課に昇すれば、収だってがる。おだっていい暮らしができるだろ! 夫婦なんだから名なんて誰でもいいんだよ! なんでそんなさなことにこだわるんだ?!」
「名なんて誰でもいいなら、あなたの企画に『佐藤美穂作』とけばよかったじゃない」
私の静かな言に、夫の顔がカッと赤く染まった。
「……何?」
「では『パジャマで適当に描いてるだけ』と見して、では私の名を消して自分の柄にする。あなたは私のデザインに価値がないとってるんじゃない。私があなたより評価されるのが、許せないだけでしょ」
核を突かれた夫の瞳が、侮蔑と恐怖で激しく揺らいだ。 夫が何か鳴ろうとをけた、まさにその瞬だった。
ダイニングに置いてあった私のスマートフォンが、けたたましい子音を鳴らし始めた。
ディスプレイに表示された名を見て、背筋にたいものがる。
『義母』。
通話ボタンを押した瞬、鼓膜を突き破らんばかりの甲い声がび込んできた。
『美穂さん! あなた、体何を考えてるの?!』
受話器をからしさなければならないほどの音量だった。
義母の息荒い声が、狭いリビングに響き渡る。
『昨の還暦のお祝いの席、台無しにしてくれたわね! 親戚ので也に恥をかかせて、企業の部さんにまで無礼な態度を取らせて! 男の嫁として、どういう神経をしてるの?!』