みかん小説
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"息子が遺した証拠" 第4話

老宮のと決

「黒田さん」 源郎のくドスの利いた声が、静まり返った客に響いた。 黒田の浮かべていた笑いが、ピクリと凍りつく。

「名古にいらっしゃるあなたが、なぜ松本にむ私の嫁の、曜の夜のをそこまで正確にごなんですかな?」

「え……? あ、いや……」 黒田の線が、ほんの瞬だけ激しく泳いだ。 「社内にも、松本に実がある社員がいましてね。たまたま見かけたと報告を受けまして……ええ、の噂ですよ」

「そうですか」 源郎はそれ以追及せず、座卓のの類を然と揃えると、茶封筒に戻して黒田のへと押し戻した。 「このの話は、の主である健太が逝った以、残された美咲さんが決めることです。隠居のである私がを挟む筋いのものではありません」

「お父、静にお考えください!」 黒田はを乗りし、苛ちを隠せない調でまくしてた。 「百万円ですよ? ただの居眠り事故に、これだけの額をす会社などにありません。奥様が変な男に騙されて、会社と争うようなことになれば、に入るはずのも入らなくなり、沼の裁判で傷つくのは翔太君なんですよ!」

「お引き取りください」 源郎は微だにせず、鋭いで黒田を見据えた。 「宮の仕事にはね、腐った材を無理やり隠すために表面だけペンキを塗りたくるような真似は通用せんのです。

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叩けば音で分かる。……お引き取りを」

黒田は忌々しそうに舌打ちし、ちがった。 「……で悔されてもりませんよ」 玄関をていく黒田の背を見送りながら、源郎の胸の疑惑は、確信へと変わっていた。 黒田は焦っている。 百万円というを差ししてでも、遺族に「切の請求をしない」というに判を押させたいのだ。そして、美咲の周囲を誰かに見張らせている。

そのの夕方、パートから帰ってきた美咲は、いつもと変わらぬ笑顔で夕飯を作ってくれた。 しかし、黒田が訪ねてきたことを源郎が告げると、美咲の持っていた菜箸がカタカタと震えた。 そしてその夜もまた――曜。 美咲は奥の部で鏡に向かい、唇にを引いた。

「お父さん、しかけてきます。翔太をお願いしますね」 「ああ……気をつけてな」

をていく美咲のろ姿。 細い肩、頼りなげな背が、夜の帳のへと吸い込まれていく。 源郎は縁側に座ったまま、え切った麦茶のグラスを握りしめていた。

美咲はなぜ、百万円もの見を拒否し続けているのか。 なぜ、幼い翔太を置いて、毎週曜の夜に姿を消すのか。 名古ナンバーの若い男とは誰なのか。 そして、健太のの真相とは体何なのか。

(疑いたくはない。美咲さんが、健太を裏切るような真似をするはずがない) 毎朝ののこもった噌汁。

祖母のを受け継いだ煮物。夜に仏壇ので流していた涙。 あれが嘘であるはずがない。 だが、もし美咲がで、健太のにまつわる巨なにち向かっているのだとしたら――。

「健太、すまん」 源郎は仏壇の息子の写真に向かって、静かにをげた。 「父さんはな、美咲さんを信じたい。信じたいからこそ、この目で確かめさせてもらうぞ。おのためにも、翔太のためにもな」

源郎はちがり、押し入れの奥から現役代に着古した濃紺の防寒ジャンパーを取りした。 そして、隣にむ気のれた幼馴染みのへ向かい、翔太の留守番を頼み込んだ。 老宮の、執の尾が始まろうとしていた。

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