"婚約破棄を告げた瞬間、義父母から謎の80万円を請求された" 第17話
の世界の、本物の法律と契約というい鉄板のにたされた瞬、そのっぺらな権威は瞬で崩れった。
の返送期だった翌週の曜。
私の埼玉りそなの座に、きっかり通の通が届いた。
『11/28 フリカエ マツモト ケンスケ 219,000円』
画面に表示された数字を見つめた。 私が預けていたおから、正当な解約違約を引いた、残りの全額。
それと同に、事務所を通じて、健介の署名と実印が押されたが返送されてきた。
震えるような、細くて頼りない健介の跡。 その印を見て、私は胸の奥で、静かに何かが終わったことを悟った。
もう、度と会うこともない。 連絡を取りうこともない。 のは、こうして黒の類と、座の数字の移だけで、きれいに精算された。
その翌週の曜、私は戸田公園の居のマンションのにっていた。
管理会社から、「内に川様のお荷物が部残されていないか、ち会い確認をお願いしたい」と連絡を受けたためだった。 健介とはをずらし、私が確認を終えたに彼が鍵を返却するはずになっていた。
オートロックをけ、階の角部へ向かう。 ドアをけると、そこには何の活もない、たい空が広がっていた。
ワックスの匂いが微かに残る、広いフローリング。
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ベランダから差し込む午の差しが、何もないのに角いを落としている。
ここに、ふたりで選んだ欧のダイニングテーブルを置くはずだった。 窓には、私がネットで探した淡いグリーンのカーテンをげるはずだった。 週末には父を招いて、父の好きな煮物を作って、健介とでビールをむはずだった。
そんな未来が、かつて確かにしていた。
リビングの央に、ポツンとダンボールが箱だけ置かれていた。 私が以、しずつ運び込んでいた調理器具や、通販で届いていたタオル類だった。 引き取りの配は済ませてある。
部の隅にち、誰もいない空を見つめた。 胸の奥に、ツンとした寂しさが込みげてくるのを否定はできなかった。
悔しさでも、りでもない。 ただ、自分がので信じ、選び取ろうとしたひとつの能性が、完全に消滅したことに対する、静かな喪失だった。
私は部に向かって、さく礼した。 「さようなら」
鍵を閉め、エントランスへりる。 マンションの敷をようとした、そのだった。
駐のから、がゆっくりと歩みてきた。
健介だった。
黒いダウンジャケットを着て、マフラーを首に巻いている。 数週よりも、らかに頬がこけ、目元が落ち窪んでいた。
私はを止めた。
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には接触禁止の条項がある。声をげるべきか迷ったが、健介はそれ以づいてこようとはしなかった。 メートルほどれた所で、力なくち尽くしている。
「……結菜」
掠れた声だった。
「荷物、それだけ?」
「ええ。あとは全部、配送を止めたから」
健介は線を落とし、アスファルトの面を見つめた。
「……母さんがさ」
ポツリと、独り言のように呟いた。
「毎、泣いてるよ。あの女のせいで親戚に顔向けができない、恥をかかされたって。俺のことも、けない男だって責めてて……」
私は何も言わなかった。 それはもう、私の背負うべき問題ではない。
「父さんも、もう俺と目をわせない。のが、めちゃくちゃだよ」
健介は顔をげた。 その瞳は赤く充血し、涙が溜まっていた。
「俺、あのあと……母さんに初めて鳴ったんだ。『全部母さんのせいだ! 母さんが余計なことばかりするから、結菜がていったんだ!』って。……そしたら母さん、ヒステリー起こして、瓶をに投げつけてさ」
健介の元が、自嘲気に歪んだ。
「その、気づいたよ。俺、ずっと逃げてたんだなって。母さんの言いなりになって、母さんの嫌を取っていれば、自分が傷つかずに済むから。結菜が傷ついてるのに、見ないふりをしてた」
健介の目から、粒の涙が頬を伝ってこぼれ落ちた。
「、いたよ。も振り込んだ。
……でも、毎に帰るのが怖いんだ。あのアパートで、母さんの切り声を聞くたびに、息ができなくなる。俺……どうしたらいいんだろうな」