"婚約破棄を告げた瞬間、義父母から謎の80万円を請求された" 第15話
「結菜! けてくれ! 悪かったよ! 俺が悪かったから……!」
私はそのに背をつけて座り込み、両をで塞いだ。 数分、叫び声は続いたが、やがて所のがドアをける音がしたのか、音はざかり、静寂が戻ってきた。
え切った玄関のたたきで、私はひとり、膝を抱えた。
終わったのだ。 の恋が。 見ていた結婚活が。 すべて、完全に々に砕け散った。
頬にたいものが筋、伝った。 悔し涙ではなかった。 ただ、自分が信じていたというに、ようやく引導を渡せたことへの、静かな弔いの涙だった。
ちがり、洗面所で顔を洗う。 鏡に映った自分の顔は、青かったけれど、その瞳の奥には確かなが戻っていた。
からは、片付けだ。 に流されず、傷をきれいに縫いわせるように、すべての契約を清算しなければならない。
スマートフォンをに取り、以会社の法務関係で相談に乗ってもらったことのある、政士事務所のホームページをいた。
『の作成・銭トラブルの解決支援』
画面を見つめながら、私はく息を吸い込んだ。 向こうがどんなにてこようと、私は私のルールで、この戦いを終わらせる。
翌朝、私はをもう追加で申請した。 司には「庭の事で急遽、公な続きが必になった」
広告
とだけ伝えた。
向かったのは、宮駅から歩いて分ほどの雑居ビルに入っている政士の事務所だった。 彩のが以、同棲解消に伴う銭トラブルで相談したという専だ。
応接スペースのたい皮のソファに座り、私は持参した類を机のに並べた。
戸田公園の賃貸借契約の控え。 仲介業者への振込細。 私の座から健介の座へ21万円を送した履歴のコピー。 式の予約規約。 そして、義母がいたあのきのノートの写真。
代半ばとおぼしきベテランの政士は、老鏡の奥の目を細めながら、類を枚ずつ精査していった。
ページをめくる乾いたの音だけが、静かな内に響く。
「……なるほど」
先は老鏡をし、机のにコトリと置いた。
「まず、結論から申しげますね。相方が主張している『80万円の替』ですが、法な返還請求権は極めて希、というか成しません」
分かってはいたけれど、専のからその言葉を聞いた瞬、胸の奥のい結び目がひとつ解けた気がした。
「理由を説します。まず、銭の貸借というのは、双方ので『貸します』『借ります』という確なの致があって初めて成するものです。依頼である川さんは、この80万円の借用にサインをしましたか?」
「いえ、していません。
広告
そもそも借りるという認識すらありませんでした」
「そうですね。さらに言えば、内訳を見ても、親戚への産や級布団など、義実側が方な向で購入した物品ばかりです。これは法律、親族の単なる贈与、あるいは義父母自の自己都による支とみなされます。方に買ったものを、から『て替えてやったからを払え』というのは、ただの理尽な押し付けに過ぎません」
先は元のメモ用にペンをらせた。
「そして最もなのが、この21万円です。居の初期費用として、あなたが婚約者の座に振り込んだものですね」
「はい。折半の約束でした」
「これは確な使途の指定があった銭です。それを婚約者が無断で実母に渡し、実母がそれを『松本からの援助』と偽ってあなたに請求している。これは非常に悪質です。法に見れば、当利得、あるいは背任にい為ですよ」
背任。 そのい言葉が、く響いた。 健介がやってきたことは、庭内の甘えなどではなく、法な境界線を越えた背信為だったのだ。
「先、私は沼の裁判をしたいわけではありません」
私は膝ののバッグを握りしめながら言った。
「ただ、法に筋を通して、正当な義務だけを果たして、完全にあのたちとの関係を断ち切りたいんです。私の父に、度と連絡がいかないようにしたい」
「よく分かります」
先は力く頷いた。
「それなら、を切交えない、徹な『婚約解消に伴う』を作成しましょう。