"車椅子の看板娘と一億円の代償" 第11話
俺は声を荒らげた。
「自分が今、笑っていられるようなじゃないことくらい、分からないのか!?」
獅原は笑い声をぴたりと止め、目遣いに俺を睨みつけると、舌なめずりをして答えた。
「分からないわけないだろー? でもさぁ、俺、別に悪いことしたとか、これっぽっちもってないからね」
「何だと……?」
「いくら何が起こったとしてもさ、俺は別に、自分のやったことに反省も悔もしないよ? だって、楽しかったもん」
その言葉を吐きした瞬、獅原はニターッと顔の筋肉を歪め、この世のものとはえない卑た笑みを浮かべて俺の顔を覗き込んできた。その底れぬ悪と狂気に当てられ、修羅をくぐってきたはずの俺ですら、わず無識に歩退りしてしまったほどだった。
「若、こいつは……!」
疾が警戒の声をげる。俺は拳を握り締め、荒くなった呼吸を無理やりえた。
「……反省やら悔やら、テメエの内面なんざどうでもいい。疾、言わせろ」
俺は再び獅原のに歩み寄り、酷な声で問い詰めた。
「おが半、女子を刺した犯だな?」
「えー? うーん……そうだよ」
あっさりと、まるで昨の気を答えるかのような軽さで、男は認めた。
その態度が、俺のりの導線にをつけた。
「……なんであんなことをしたんだ!? 彼女はな、おに切りつけられた恐怖から、今でも自分ので歩くことすらできず、まともに言葉も発せられないほどく傷ついているんだぞ! 理由をきっちり説してもらわなきゃ、筋が通らねえんだよ!」
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俺の号が物置のトタンを震わせる。
だが、獅原は首を傾げ、底議そうに目を丸くした。
「えー? 自分で歩けなくなったとか、らねーし。それってさ、俺の責任なの? その女子の気持ちがかったのがいけないんじゃないの? そんな責任を俺に押し付けられたら、俺の方がなんだけどー」
「貴様……ッ!」
「うるさい! 黙れ!」
俺は理性の限界を迎え、鳴りつけると同に獅原の胸ぐらを片で力任せに掴みげた。痩せた体が宙に浮く。
「うわぁ、こっわーい!」
首を絞めげられながらも、獅原はケラケラと嘲笑い続けていた。
「俺らをコケにするのも概にしろよ、クソ野郎が! 誰に命令された!? どうしてあの子をやった!? テメエはそれだけを答えればいいんだよ!」
俺の鬼気迫る剣幕に、獅原は瞬だけ目を細めた。
「へえー……どうしよっかなぁ……?」
男がそう呟いた次の瞬、信じられないことが起こった。
獅原は拘束されていたはずの体を、骨がれるような異常な角度で無理やりねじり、俺の拘束から滑り抜けたのだ。そして、どこに隠し持っていたのか、袖から滑り落ちた剃刀のようにく鋭利な型ナイフを指先で操り、自らの体を縛りげていた麻縄を瞬にして切り裂いた。
「しまっ……! 貴様、何を隠し持っていやがった!」
俺が叫ぶ。
「疾、こいつをもう度押さえろ!」
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「はい!」
疾と部たちが斉にびかかった。
だが、俺たちのが獅原の体に届くことは、度となかった。
縄から解き放たれた獅原は、逃を図るでもなく、俺たちに刃を向けるでもなかった。奴はただ、にっと元に醜悪な笑みを浮かべると、にした型ナイフを逆に持ち替え――躊躇いの片すらなく、自らの喉元へとく突きてたのだ。
「がっ……!?」
部のひとりが息を呑む。
血沫がプシュッと噴きす、獅原は狂気に染まった瞳で俺を見据え、気管から血を泡たせながら、掠れた声で嗤った。
「俺が……やったってことがバレたら……自害するようにって……『とある』に、言われてたんだよねぇ……」
ナイフがさらにく、横へと引かれる。
「だから……もう、俺のお遊びはおしまい……。ああ……楽しかったぁ……。に、悔いも……反省も……なし、です……」
ゴボッ、と量の鮮血がから溢れた。
次の瞬、ドシャリと音をてて獅原の体がに崩れ落ちた。傷から吹きす赤黒い血が、乾いた板を瞬くに真っ赤に染めげていく。男の瞳からは急速にが失われ、しかしその元には、最まであの悍ましい嘲笑が張り付いたままだった。
静寂が、物置を支配した。
あまりに突発で、あまりに異常な幕引きに、俺たち王会のは誰としてくことができず、ただ広がり続ける血のを呆然と見つめていた。