みかん小説
本棚

"車椅子の看板娘と一億円の代償" 第10話

あんな化け物に夜で突然切りつけられたら……そりゃあ、蒼井ちゃんだって消えないトラウマになるわ」

俺は奥歯を噛み締め、りで震えそうになる拳を抑え込んだ。

「ええ、全くです。常軌を逸しています」

疾もまた、氷のようなたい声で同した。

しばらくの、俺たちは暗のでそのな属音を聞きながら、突入のタイミングを計っていた。やがて、男が研ぎ澄まされた包丁を球にかざし、その刃先を眺めて満げに喉を鳴らした瞬、俺は静かに、しかし力く部たちに図を送った。

「おら、いいか。くぞ。……に本で言ったことは覚えているな? あいつをただのチンピラだとうな。あいつは正真正銘の狂、獅原淘汰だ。そして、蒼井ちゃんを傷つけた張本でもある。何があっても、絶対にかして話を聞きすんだ。いいな」

「はい!」

部たちがく押し殺した声で応じた。

「突入!」

俺の号令とともに、部たちが物置の引き戸を気に蹴破った。

バァンッ!と凄まじい破壊音が夜の静寂を切り裂き、片と埃がい散る。俺たちは涛の勢いでのへと崩れ込んだ。

しかし、元を揺るがすような突入劇にもかかわらず、箱に座っていた獅原淘汰は、び起きることも、慌てて武器を構えることすらしなかった。奴は入りを埋め尽くした俺たちの姿をチラリと瞥しただけで、まるで夜が吹き込んできたかのように、何事もなかったかのように再び元の刃物に線を戻し、ジャキッ、ジャキッと研ぎ続けたのだ。

広告

その常軌を逸した無反応さに、踏み込んだ部たちも瞬気圧される。

俺は歩に踏みし、を踏み鳴らして男を見ろした。

「獅原淘汰だな」

「…………ふーん」

男は刃先から目をさず、気の抜けたのような返事を漏らしただけだった。

「ふざけた返事をしてるんじゃないぞ」

俺はドスの利いた声を叩きつけた。

「俺たちは、王会の者だ。おに聞きたいことがあって乗り込んできた。そのかしているを、度止めてもらおうか」

「王会」という、裏社会で誰もが震えがる組織の名をせば、どんな命らずでもの揺は見せるはずだった。だが、獅原は研ぐを微も止めようとせず、ヘラヘラとした笑いを浮かべたまま答えた。

「えー……やだけど。俺、こういうことやってるが番好きなんだよね。なんかさ、好きなことをやってるって、『きてる』ってじがするじゃん?」

「…………!」

あまりの噛みわなさに、背筋にたいものがる。命のやり取りをする極の世界の論理が、この男には切通用しない。恐怖も、名誉も、組織の威も、この男の壊れた精神のには何の価値も持っていなかった。

なるほど、と俺は内でややかに得した。これほどの破綻者だからこそ、何の罪もない女子を平然と襲い、その未来を無残に切り裂くことができたのだ。

広告

「疾、こいつを縄で縛れ。これじゃ話にならん」

「はい」

疾が図を送ると、屈な部名が素く踏み込み、獅原の両腕を背にねじりげて太い麻縄で幾にも縛りげた。

獅原は暴れるでもなく、喚くでもなく、まるで形のようにされるがままになっていた。取りげられた包丁がに転がり、カランと乾いた音をてる。拘束されてなお、奴の顔には驚きや焦りのは微もなく、ただ好奇を隠さない気悪い笑みが張り付いていた。

俺はそんな獅原の態度を観察しながら、胸の奥で急速に膨れがる違を拭えずにいた。

「おい、獅原。お、どうしてそんなに静でいられるんだ?」

俺は箱のにしゃがみ込み、奴の歪んだ瞳を正面から見据えた。

「俺らはな、おが半、とある女子を刃物で刺した犯じゃないかって疑っておのにっているんだよ。その女子は……俺の、ちょっとした恩の娘でな。……なあ、ここまで言えば、俺が何を言いたいか、おでも分かるよな?」

俺の殺気を帯びた問いかけに対し、獅原は喉の奥を鳴らしてケラケラと笑いした。

「アハッ……アハハハッ!」

甲い、狂気に満ちた笑い声が狭いに反響する。

「おい……何が笑しいんだ、テメエ!」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: