"毎週木曜日、君が来る" 第5話
何もしないで、そばにいる
映画の帰り、並んで歩くのが、何度か僕のに触れた。
つなぎたいとった。けれど、指をかすたび、もし違ったらとためらった。次の瞬、彼女がバッグを反対のに持ち替えた。
僕はそっと、その指に触れた。はを向いたまま、をいた。
握ったは柔らかくて、し汗ばんでいた。緊張しているのが僕だけではない気がして、急に彼女がいとおしくなった。
駅がづくにち止まり、好きだと伝えた。
「私も」
はそう言って、つないだをし持ちげた。
付きうようになっても、曜の玄関では敬語を使った。
「いつもありがとうございます」
「こちらこそ」
しおかしくて、どちらかが目をそらす。彼女が次のへ向かってから、僕は受け取った商品を蔵庫に入れる。私で会う彼女も、仕事をしている彼女も、よりずっといになった。
それでも、まだらないことはたくさんあった。
11の曜、僕は夕方から台所にっていた。
が好きだと言っていた鶏の炊き込みごはんを作るつもりだった。料理の画を何度も止め、切ったにんじんの太さを画面と見比べる。米に具を混ぜてから炊くのか、に載せるだけなのか。そんなこともらなかった。
炊飯器のスイッチを押したところで、話が鳴った。
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「ごめんね。今、けなくなった」
の声には、いつもの張りがなかった。
母親が膝を痛め、仕事を終えてから病院に付き添っていたという。入院の必はなかったが、帰宅して事や呂の支度をしているうちに、遅くなってしまったらしい。
「丈夫? 僕、こうか。何か買っていく?」
「ううん。買い物は済んだから」
「は? 送るとか、荷物持つとか、できるけど」
「は、まだ……」
返事が途切れた。炊飯器から、ゆっくり湯気ががり始めた。
「慮しなくていいよ。僕、はわせられるし」
沈黙の向こうで、器の触れる音がした。
「直君、ごめん。今、うまく決められない」
僕はを閉じた。
しでも役にちたかった。けれど、何をしてほしいか、いつ来てほしいかを、疲れた彼女に次々と考えさせていた。
「……そっか。ごめん。答えなくていい」
「私も、ごめんね。せっかく、ごはん作ってくれたのに」
「それは丈夫。もべられるから」
言いながら、空いている子を見た。残な気持ちはあった。朝から楽しみにしていたのだから、ないふりはできなかった。でも、それを今、彼女に埋めてもらうことではないとった。
「今、座れてる?」
「うん。台所の子」
「話、このままで平気?」
しがあった。
「……うん」
僕も子に腰をろした。
は、母親が病院へくのを嫌がったことを話した。歩けるから丈夫だと言い張り、靴をはくのにも困っていたこと。
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帰宅すると、頼んでいないのに洗濯物を取り込もうとして、また痛がったこと。
「じっとしててって、く言っちゃった」
僕はテーブルの目を見ながら聞いた。
「配だったんだね」
「うん。でも、お母さんも、何でもやってもらうのが嫌だったんだとう」
をすする音がした。僕はわず体を起こし、何か言おうとしてやめた。
しばらくして、彼女が息をえた。
「今はね、ちょっと話を聞いてもらいたかっただけかもしれない」
「うん」
「何が必か聞かれても、自分でも分からなくて」
「うん。気づかなくて、ごめん」
「聞いてくれて、ありがとう」
彼女の声がし戻ったので、僕は握っていたをいた。
話を切ったあと、炊き込みごはんを茶碗によそった。し柔らかかったが、は悪くなかった。
写真を撮って送ろうとして、やめた。代わりにべ終わってから、く打った。
〈ごはん、うまくできた。また作るね。返事はでも丈夫〉
翌朝、からメッセージが来た。
〈お母さんが寝たあと、し眠れました。今度、ごはんべたい〉
続けて、もう1通。
〈今は、夕方に10分だけ話してもいい?〉
僕は布団ので、画面を両で持ち直した。
〈もちろん〉
今度は、そのひと言を送った。