"毎週木曜日、君が来る" 第4話
制を着ていない君
次の約束までの1週は、仕事が妙ににつかなかった。
昼休みにスマートフォンをき、彼女からの返事がないか確認する。自分から送ったのはの所だけなのに、何か付けせば会話が続く気がして、気の話を打っては消した。
そのうち、のほうから写真が届いた。
端の植鉢に、パンの袋を留めるさな留め具が刺さっていた。油性ペンで「ねぎ」といてある。
〈名のつけ方、かわいかった〉
僕は写真を拡し、机のでひとり笑った。きれいなでも、名な景でもない。彼女が仕事帰りにを止めたものを、僕にも見せようとしてくれたのがうれしかった。
〈ねぎも、迷子にならなくてだね〉
送ってから、くだらなかったかもしれないと額を押さえた。
すぐに笑っている顔のスタンプが返ってきた。
休のは、よく歩いた。
古本をのぞき、さな公園のベンチでパンをべ、回りして川沿いを帰る。僕は彼女の隣で、気になったものを見つけるたびにち止まることを覚えた。
あるは途で、彼女が急にを止めた。
「ごめん。この靴、失敗した」
かかとを気にしている。僕はすぐにくのベンチを指した。
「絆創膏、買ってくる」
「持ってる。座れれば丈夫」
バッグからさなケースをすのを見て、僕も隣に座った。
広告
彼女はかかとに絆創膏を貼り、ため息をついた。
「よく歩くって分かってたのに。こっちのほうが、にうとって」
僕は彼女の靴を見た。淡い茶で、さな具がついている。
「似ってる」
「……今、気づいたでしょう」
「うん」
正直に答えると、は笑って僕の肘を軽く押した。
次に会うは、歩く距のいを選んだ。彼女は図を見て「ありがとう」とだけ言った。気づいてもらえたことにほっとして、僕はのグラスを持ちげた。
彼女が僕の部へ初めて来たのは、借りた本を返しに来ただった。玄関先で渡して帰るつもりだったらしい。
「お茶、んでいかない?」
言ってから流しに置いた朝の皿をいし、僕はし悔した。
は靴を脱ぎかけて、顔をげた。
「本当に丈夫? 急に来ちゃったけど」
「うん。皿だけ、見ないことにしてもらえれば」
「じゃあ、私はかばんのを見られない権利をもらいます」
彼女はそう言って、バッグを膝に抱えて座った。
マグカップを2つ並べた、し迷った。普段使っていないほうに欠けがないか、指で縁を確かめる。そんな僕を見て、が元を緩めた。
「緊張してる?」
「かなり」
「よかった。私だけかとった」
カップを置くと、彼女は両で包んだ。僕の部にいることを確かめるように、窓や本棚へ静かに目をかした。
買っておいた豆福をすと、彼女は声を弾ませた。
広告
「これ、好き。豆がいっぱい入ってるの」
ひとかじり、うれしそうに目を細める。僕は包装をたたみ、の名を覚えておいた。
帰り際、僕は次の約束を切りした。
「来週、あの映画、見にかない?」
彼女は靴にを入れたまま、こちらを向いた。
「それ、同級として?」
喉が詰まった。も平気な顔をしているわけではなかった。バッグの持ちを握る指に、力が入っていた。
「それとも、デート?」
「……デートにしたい」
言い終えるまで、彼女の目を見ていられなかった。
はを向き、靴のつま先をそろえた。しばらくして、さく息を吐いた。
「じゃあ、歩きやすい靴にする」
顔をげた彼女が笑っていたので、僕も笑った。
ドアが閉まったあと、流しの皿を洗った。2つのマグカップをすすぎ、並べてを切る。片方を器棚の奥へ戻しかけて、に置き直した。