"毎週木曜日、君が来る" 第1話
蔵庫のの約束
曜の朝だけ、僕は目覚ましが鳴るに目を覚ました。
カーテンをけ、湯を沸かし、洗面所の鏡ので寝癖を直す。誰に会う予定もないほかのには、昼まで部着のままでいることもあったのに、そのは必ず襟のあるシャツを着た。
午11がづくと、パソコンのを何度も見る。計を確認したところで仕事はまない。それでも、廊で音がすると、キーを打つ指が止まってしまった。
チャイムが鳴っても、すぐにはたない。待っていたことを悟られたくなくて、ので3つ数える。誰も見ていないのに、そんなことまでしていた。
京の会社に勤めたまま、故郷の町へ戻ってきて半になる。34歳になり、満員に乗らずに働けるようになった。駅からしれた2DKの部は静かで、賃もい。望んでいた活のはずだった。
ただ、会議のないには、夜まで声をさないことがあった。
スーパーのレジで「袋はいりません」と言って、しかすれた自分の声に驚く。に帰れば、朝に置いたマグカップが、同じ向きのまま机に残っている。
そんな暮らしに、彼女は毎週やって来た。
「こんにちは。ヤクルトです」
初めて訪ねてきた、僕はドアの隙から顔だけをした。彼女は保バッグを持ち直し、野田と名乗った。
「定期なお届けもしています。
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よろしかったら」
断るつもりでけたドアを、僕はし広げた。るい声だったけれど、急かされるじがしなかった。
商品を選んでいる、彼女の線が玄関脇の段ボールに止まった。
「お引っ越しされたばかりですか」
「いえ、もう3かになります。なかなか片づかなくて」
「最のひと箱って、残りますよね」
彼女は笑うに、しだけ唇を結んだ。どこかで見たことがある気がしたけれど、誰だったかいすより先に、僕も笑っていた。
翌週には、その箱を片づけた。
彼女が来るたび、玄関でしだけ話すようになった。急に暑くなったこと。駅のパンが改装すること。僕が仕事の締め切りで、休までパソコンに向かっていたこと。
「先週のお仕事、にいましたか」
ある朝、釣り銭を渡しながら彼女が聞いた。
瞬、何を聞かれたのか分からなかった。自分が話したことを、誰かが次の週まで覚えている。たったそれだけなのに、胸のあたりが落ち着かなくなった。
「なんとか。昨、終わりました」
「よかった。じゃあ、今はしゆっくりできますね」
部に戻っても、しばらくドアのにっていた。ののみ物はたいのに、のあたりだけがかった。
それから、勧められるとつい余分に買うようになった。
みきらないうちに、次の曜が来るようになった頃、彼女に聞かれた。
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「ちゃんとめていますか」
「ええ、まあ」
「いくつくらい残っています?」
数をなく言おうとして、なぜかうまくいかなかった。
「……10本くらい」
彼女はし目を丸くし、それから注文票に伸ばしていたを引っ込めた。
「じゃあ、今週はお休みにしましょう。期限、見ておいてくださいね」
「でも」
「みきってからで丈夫ですよ。また来ますから」
また来ます。
その言葉を聞いて、僕はようやくうなずけた。彼女はもう1度注文票を確かめ、何もきさずにしまった。売るためなら、もうし勧めてもよかったはずだ。そんなことを考えながら、僕は空になった彼女の元を見ていた。
次の曜、玄関をけると、彼女は空いているほうのをさくげた。
「今は残りの確認です」
「あと3本です」
「順調ですね」
何も買わなかった。話したのも、ほんの1分ほどだった。
それなのに、ドアを閉めてから昼のために米を研いでいると、気づけばがていた。途でに返り、を流したままを閉じる。
もう度、さくずさんだ。
誰も聞いていない台所が、そのはいつもほど広くじなかった。