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"「私はいつ休めるの?」に夫は「家にいるだろ」と返した" 第4話

ほんの分ほど、リビングを往復しただけだった。

それを見た義母は、まるで偉業でも目撃したかのように両を打って嘆の声をげた。

「まあ! 素らしいわねえ、直。自分からんで抱っこするなんて。今の男のは本当に偉いわね。昔の父親なんて、赤ん坊が泣いたら別の部へ逃げていくのが当たりだったのに。美さん、いい旦さんを持ってお幸せねえ」

キッチンの流し台で麦茶を注いでいた私の元が、ピクリと止まった。

グラスの縁に触れた指先がたく張る。

――お幸せねえ。

その言葉が、の奥で嫌な反響を残した。 たった分。嫌の良い帯に、座ったまま抱っこしただけで「偉い父親」の称号が与えられる。 毎、泣き叫ぶ声に神経を削り、眠を寸断され、事もったまま流し込んでいる私のは、このの目には何ひとつ映っていない。

「……麦茶、どうぞ」

努めて平静を装い、義母のにグラスを置いた。

夫は「腕疲れたわ」と呟き、悠斗を無造作にハイローチェアへ戻すと、すぐにソファへ倒れ込んでスマートフォンをいた。 テーブルのには、夫がみかけで放置したアイスコーヒーのグラスから結した滴が滴り落ち、輪染みを作っている。

義母はそれに気づくと、何も言わずにちがり、台所から布巾を持ってきて丁寧に拭き取った。

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さらに、夫が空にしたグラスを当たりのように回収し、流し台へ運んでいく。

「お義母さん、いいです。私がやりますから……それに、直に自分で片付けさせてください」

私がさく制止すると、義母は振り返り、悪気のない柔らかな笑顔を浮かべた。

「いいのよ美さん、コップひとつくらい。母親なんてね、こういうの体が勝にいちゃうものなのよ。直はで毎汗垂らして、会社でげて働いてるんだから。のくらい、お殿様でいさせてあげなきゃじゃない」

胃の底が、ぎゅっと雑巾のように絞られた。

お殿様。 で働いているから。 族を養っているから。

その免罪符が、このではどれほど力な絶対悪として能しているか、義母はほども疑っていないのだ。夫のあの無神経さ、あの傲さは、こうして作られてきたのだと痛した。

「母さん、ちょっとトイレ借りるわ」

夫がちがり、すりで廊へてった。

数分、夫がリビングに戻ってくると同に、入れ違いで義母が「私もを洗わせてもらうわね」と洗面所へ向かった。

その直だった。

「あらあら、直ったら。相変わらずをバシャバシャ洗うんだから」

洗面所から、義母の苦笑い混じりの声が聞こえてきた。 見にくと、義母はペーパータオルを数枚引きし、腰をかがめての滴を拭き取ろうとしていた。

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蛇の周りだけでなく、面にび散った、あのいつもの滴を。

ので、張り詰めていた糸がプツンと切れた。

「お義母さん」

私の声のたさに、義母のが止まった。 かがんだ姿勢のまま、驚いたように私を見げる。

「拭かないでください」

「え? でも、濡れてるから……」

「直が自分でやるべきです。直、ここに来て」

リビングに向かって声を張った。 ソファからだるそうに顔をした夫は、私の切迫した表を見て、舌打ちをしながら歩いてきた。

「なんだよ、うるせえな。母さんになんか言ったのか?」

「、び散らかしたのあなたでしょ。自分で拭いて」

夫は信じられないものを見るような目で私を睨みつけた。 その横から、義母が慌ててちがり、夫をかばうようににた。

「美さん、そんな目くじらてなくてもいいじゃないの。たかが滴よ? 私がついでに拭けば済む話でしょう。直は昔からこういう細かいこと苦なのよ。男のなんてみんなそう。目に見てあげなさいな」

宥めるような、けれど確に「嫁が気に息子を責めるな」という圧を孕んだ調。

私は逃げなかった。 目を逸らさず、義母の顔を、そしてそのろでそうにを尖らせている夫の顔をまっすぐに見据えた。

「たかが滴じゃありません」

喉の奥が震えたが、言言、区切るように発音した。

「抱っこ紐で赤ちゃんを抱えていると、元が見えないんです。

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