"「私はいつ休めるの?」に夫は「家にいるだろ」と返した" 第3話
悪びれもせず、むしろ「指示を待ってやる寛な自分」をアピールするような言いだった。
瞬、これでしは状況が好転するのかもしれない、と淡い期待を抱いてしまった。 「言えばやってくれるなら、指示をせばいい」 そう自分に言い聞かせたのだ。
けれど、それがさらなる獄の入りだということに、私は翌すぐに気づかされることになった。
曜の夜。 夫は珍しくに帰ってきた。スーツを脱ぎながら、「オムツくらいなら替えてやるよ」と自ら言ってきた。
その言葉に、瞬だけ胸が軽くなった。 「ありがとう。じゃあお願いできる?」
そこからだった。
夫はベビーベッドのにち、腕を組んだまま振り返った。 「オムツ、どこ?」
「……ベッドの横のワゴンの、番の段」
「おしりふき、これカピカピだけど。ストックどこ?」
「ワゴンの段目の奥」
「え、これテープどっちが? どのくらいのキツさで留めんの?」
悠斗がたい空気に触れてぐずり始める。 私は夕の噌汁をお椀に注ぐを止め、を消し、りで寝へ向かった。 結局、夫の元に付きっきりで、「ここを指本分空けて」「テープは平に」と教えなければならなかった。
夫がオムツ枚を替えるのにしたは分。 その、私は何ひとつ自分の作業をめられなかった。
それだけでは終わらない。
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「ゴミし、だっけ? 何ゴミせばいいの?」 「悠斗の着替え、どれ着せればいい? ? ?」 「ミルク、お湯の温度って何度だっけ? スプーン何杯?」
全部だ。 何ひとつ、自分で見て、考えて、判断しようとしない。
引きしをければオムツのストックは目に入る所にある。 ゴミカレンダーは蔵庫の正面に貼ってある。 ミルクの缶の裏には、齢ごとの分量と作り方がきな文字で印刷されている。
界に入っているはずなのに、見ようとしない。 「妻に聞けば答えがる」という提で、自分の脳のメモリを切かそうとしないのだ。
作業のだけを貸しし、考と管理のコストはすべて私に丸投げする。 いわゆる「指示待ち」を庭内に抱えることが、これほど精神を摩耗させるものだとはらなかった。
「指示してくれればやる」という言葉の正体は、 「責任も判断も全部おが持て。俺は言われた通りにくに過ぎないから、失敗しても俺のせいじゃない」 という、最も巧妙な責任逃れだったのだ。
夜、溜まった哺乳瓶を洗うために台所にった。 え切ったシンクに、スポンジの泡が静かに消えていく。 荒れで赤くひび割れた指先が、洗剤の刺激でズキズキと痛んだ。
言えばやってくれる。 けれど、言うためのエネルギーはどこから湧いてくるのだろう。
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「指示をす」という為そのものが、どれほどを疲弊させるか、あのは気づかないのだろうか。
曜の午、チャイムが鳴った。
インターホンの画面には、い藤のカーディガンを着た義母、恵の姿が映っていた。 にはデパの袋を提げている。
息が詰まりそうになるのをみ込み、私はエプロンをして玄関へ向かった。
「こんにちは、美さん。急にごめんなさいね。悠斗ちゃんの顔が見たくて、くまで来たから寄っちゃったの」
「いらっしゃいませ、お義母さん。どうぞ」
靴を揃えてがる義母の取りは軽やかだった。 居へ入るなり、クーファンで眠っている悠斗の元へりで駆け寄る。
「まあまあ、いわねえ。直のさい頃にそっくり。ねえ直、見てごらんなさいよ、このおでこの形」
休の昼がり、パジャマ代わりのスウェットのままテレビでゴルフ継を見ていた夫が、気だるそうに起きがった。
「そう? 俺、こんなにかった?」
「何言ってるの、あなたも赤ちゃんの頃はお団子だったのよ」
義母は目を細めて息子を見げた。 その差しには、歳を過ぎた成男性に対するものではなく、まるでまだ自分の庇護にある息を見つめるような甘やかさが滲みている。
「直、ちょっと抱っこしてみたら? ほら、起きたわよ」
夫は面倒くさそうにしながらも、義母の、悠斗を両で抱きげた。 ぎこちないつきで体をトントンと叩く。