"生け垣を伐った4日後、隣人が青ざめた理由" 第16話
真っ直ぐなフェンス
半ば、枯らしが吹き荒れるの。 佐々造園のトラックが、再びがの庭先にやってきた。 荷台には、真しいヒノキの角材と、のスリットフェンスが積まれていた。 敏夫から支払われた原状回復費用を使い、け垣の代わりにしい境界フェンスを設置するためだ。
「さあて、奥さん! ご主が遺してくれたあの赤い境界標に、狂いなく本の筋を通しますよ!」 佐々親方が鉢巻を締め直し、若い職たちと息をわせて柱をてていく。 カケヤで杭を打ち込む気よい音が、の澄んだ青空にコーン、コーンとよく響き渡る。
境界杭の赤い字のに糸が張られ、ミリのズレもなく据え付けられていくのフェンス。 さは・メートル。の胸ほどのさで、通しが良く、側の見通しを切遮らない放なデザインだった。 「親方、とても綺麗ですね。のいいりがします」 私が温かい缶コーヒーを差しすと、親方は甲で汗を拭いながら破顔した。
「ヒノキの赤を使った特注品ですよ。これなら腐らねえし、毎刈り込むもいらねえ。……それに何より、ほら見てごらんなさい」 親方が指差した先。 フェンスの元には、境界線からたっぷりセンチの退スペースが確保されていた。
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学が並んで歩いても、絶対に肩が触れわない、全で広々とした歩空がまれていたのだ。
「ご主が、なぜけ垣を内側に控えて植えたのか。そのが、このフェンスにもちゃんと受け継がれてますよ」 親方の言葉に、私は胸がいっぱいになり、そっとフェンスの滑らかな肌を撫でた。 け垣は消えてしまったけれど、政治が守り抜こうとした「者への気遣い」という見えない境界線は、何つ失われていなかった。
夕方、途の黄い子をかぶった子供たちが、フェンスの向こうを通りかかった。 「あ! おばあちゃん、しいの柵になってる! すごくるいね!」 「角のところが広くなって、歩きやすいよ!」 子供たちがフェンス越しに笑顔でを振ってくれる。 「気をつけて帰るのよ」 私がを振り返すと、子供たちはうように笑いながら、茜に染まる坂を駆けりていった。 け垣を失った庭の喪失は、いつのにか、清々しい解放へと塗り替えられていた。