"生け垣を伐った4日後、隣人が青ざめた理由" 第12話
夜の座と示談の条件
そのの夜、を回った頃だった。 え込みが厳しくなり、油ストーブの炎を見つめながらお茶をんでいた私のに、慮がちなインターホンの音が届いた。 ピンポーン……。 昼の美津のような乱暴な連打ではない。消え入りそうな、ためらいに満ちた音だった。
玄関をけると、灯のにっていたのは、敏夫だった。 には菓子折りすらなく、ただくを垂れ、寒さに肩を震わせている。 「……佐野さん。夜分遅くに、本当に申し訳ありません」 「さん……ご主ですね。どうぞ、玄関のへ」 「いえ、私のような者が、佐野さんのお宅にがる資格はありません。ここで……ここでお話しさせてください」
敏夫は(たたき)のたいコンクリートのに、ためらうことなく両膝を突き、額を靴の先スレスレまでげた。 「佐野さん。すべては、私の甲斐なさが招いた結果です。妻の勝な見栄を止められず、仕事にかまけてのことをすべて丸投げにしていました。佐野さんが切に守ってこられたのけ垣を奪い、くなられたご主のおを踏みにじったこと……いくら謝っても、許されることではないと分かっております」
男の背から伝わってくるのは、保のための言い訳ではなく、骨に染みた本当の悔だった。
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私はすりに掴まりながら、静かに問いかけた。 「役所からの命令は、どうされるおつもりですか」
「、信頼できる解体業者と正式に契約を結びます。を取り、私の目ので、越境したサンルームを台の基礎からすべてハツリ取り、完全に撤させます」 敏夫は顔をげ、涙に濡れた目で私を見つめた。 「そして……松永調査士から提示された、過にわたる敷の法占拠に対する損害賠償、ならびに境界フェンスの復旧費用、わせて百万円。私の個座を解約し、退職の借りをして、今週にお支払いいたします」
「百万円……決してさなおではありませんよ。ご自宅のローンもあるのでしょう?」 「自業自得です」敏夫は唇を噛み切った。 「妻はまだ、が惜しいと喚き散らしています。ですが、筋を通さなければ、はとしてきていけません。佐野さんのご主が遺された教えの通りです。……どうか、この償いを受け入れていただけないでしょうか」
私はく息を吸い込み、仏の方を振り返った。 暗がりの、政治の遺が穏やかに頷いたような気がした。 「わかりました、さん。解体事が滞りなく終わり、境界線が正しく戻るならば、私はそれ以の刑事告訴や追加の請求はいたしません。……お体を切になさってくださいね」
敏夫は再びくをげ、夜ののへ、さくなった背を丸めて帰っていった。