"生け垣を伐った4日後、隣人が青ざめた理由" 第4話
黒塗りの公用と青の霹靂
半ばの曜、午分。 まだ朝の片付けをしていた私のに、玄関の引き戸を激しく叩く音がび込んできた。 ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン! 尋常ではない連打。棒か事かと肝をやしながら玄関へると、そこには見らぬスーツ姿の男性が、厳しい面持ちでっていた。 胸元には、の職員章が鈍くっている。
「失礼ですが、佐野ふみ子さんでいらっしゃいますね?」 配の職員が帳を提示し、事務でい声で名乗った。 「役所・管理課の保全係の者です。……実は今朝、民の方から緊急の通報が入りまして、現確認に参りました」
「通報……ですか?」 私が呆然とち尽くしていると、扉のから、嘲笑を孕んだ甲い笑い声が割って入ってきた。
「まあ! 役所の方、本当にこんなにく来てくださったのね!」 現れたのは、これ見よがしに腕組みをした美津だった。 目尻を吊りげ、勝ち誇った笑みを浮かべながら、職員たちの横へみる。
「職員さん、見てちょうだい! このけ垣よ! 法第条違反でしょ!? の建築限界を幅に侵して、学の通学の見通しを完全に塞いでいるのよ! 私、々からこのお寄りに『危ないから切りなさい』って何度も何度も警告してきたんです! それなのに、このったら頑として無して!」
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美津は通にも聞こえるような声で喚き散らし、私を指弾した。 「隣民の全を脅かす、違法なけ垣です! の方から、即刻撤の政指導をしてください!」
法第条。建築限界。 聞き慣れない法律の用語を並べて、美津は職員たちに同を求めた。もって入に役所の相談窓や条文を調べげ、網打尽にするタイミングを虎眈々と狙っていたのだ。 配の職員は美津の剣幕にし引き気になりながらも、メジャーを取りし、け垣の張りし具を計測し始めた。
「……確かに、面空・メートル以内の空に、イヌマキの枝が約センチほど越境していますね。佐野さん、これは法の占用基準に抵触し、全確保の観点から正指導の対象となります」 職員は申し訳なさそうに、だが公務員としての職務を全うすべく、枚の黄い指導文を差ししてきた。
「あんな違法なけ垣、根こそぎなくなればいいのよ! 寄りのエゴで子供たちを危険に晒すなんて、恥をりなさい!」 美津の罵声が、のえ切った朝の空気に響き渡る。 所の民たちが、何事かと巻きにがを取り囲み、ヒソヒソと囁きっていた。
私のので、黄い指導がカサリと音をてた。 恥ずかしさや悔しさで、顔からがるようだった。
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だが――私の胸の奥に広がったのは、美津に対するりではなかった。
(お父さん……本当に、ごめんなさい。私がぐずぐずしていたせいで、あなたが植えてくれたに、を塗ってしまった……)
美津の言う通り、枝がにていたのはかぬ事実だ。 言い訳は切通用しない。 私がをげ、静かに息を吸い込んだ、美津は「どう? ぐうの音もないでしょう!」と胸を反らした。 その浅ましい姿を見つめながら、私ので、何かが静かに、だが逆の決となって固まっていった。
「職員さん。ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありませんでした」 私は々と、度の礼をした。 「言い訳はいたしません。……すぐに、すべて撤いたします」
「えっ……すべて、ですか? 張りした枝を剪定するだけでも正にはなりますが……」 驚く職員に対し、私はしっかりと顔をげて答えた。 「いいえ。途半端に残せば、私の腰ではまた数に同じご迷惑をおかけします。に面したけ垣は、すべて根元から伐採し、根も掘り起こして更にいたします」
その言葉を聞いた瞬、美津の顔に「まさかそこまで」という揺と、それを回る卑た歓が広がった。 「あら! ご自分でそうおっしゃるなら結構なことね! せいぜいく綺麗さっぱり片付けてちょうだい!」
美津は笑いを残して自宅へと戻っていった。
私はその背を見送ることなく、帳をき、所で最も腕利きと評判の造園会社へ、即座に話をかけたのだった。