"生け垣を伐った4日後、隣人が青ざめた理由" 第2話
自のサンルームと夫の遺訓
それから数の昼がり。 所の植さんに剪定の配を頼もうと話帳をめくっていた私は、ゴミしのために扉をけた。 ちょうどそこへ、買い物帰りの美津が、両に級スーパーの袋を抱えて歩いてきた。 私と目がうと、美津は先の声など嘘だったかのように、わざとらしい甘ったるい笑顔を作って招きした。
「あら、佐野さん! ちょっといらっしゃいよ! 見てちょうだい、これ!」 美津が自げに指差したのは、邸の庭の奥――ちょうどがのけ垣と背わせになるの角に増築された、全面ガラス張りの広なサンルームだった。 真しいアルミサッシが陽を浴びてギラギラと輝き、には輸入もののいラタンチェアやガラステーブル、観葉植物が所狭しと並べられている。
「素敵でしょ? 都会のマンションを売っ払って、い切って郊にを買ってを建てたのよ。庭付きの戸建てとサンルームなんて、私の昔からの憧れだったんだから!」 美津は興奮気に、そのサンルームがいかに級な特注品であるかを捲してた。 「も入ってるのよ。ちゃんとした流のハウスメーカーの系列業者にお願いしたんだから。普請の建売とは格が違うの! 週末はここでお友達を呼んで、アフタヌーンティーをく予定なのよ!」
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「それは……とても派なものができましたね」 私が会釈をすると、美津の目がふっと細められ、ねっとりとした敵が宿った。 「でしょう? でもねえ……本当に惜しいのよ。お宅のあの鬱陶しいけ垣さえなければ、もっとからのが入って、サンルームがのからも綺麗に見えるのに」
美津は忌々しそうに、がのイヌマキのけ垣を睨みつけた。 さメートルを超えるけ垣は、確かに邸のサンルームの半分をすっぽりと覆い隠す形になっていた。 「あんなボサボサのけ垣、ただの目障りな壁じゃない。くバッサリ切り倒してくれればいいのに」
「おい、もういいだろ。佐野さんだって忙しいんだから」 邸の玄関から、夫の敏夫が顔をした。堅商社に勤めているという敏夫は、いつもどこか疲れたような表をしており、所付きいに狂奔する妻をめた目で見ているようだった。 「あなたは何よ! 私がせっかくがの価値をめるお話をしてるんじゃないの!」 美津がヒステリックに鳴り返すと、敏夫は肩をすくめ、妻と目をわせないままそそくさとのへ引っ込んでしまった。
残された美津は、忌々しそうに私を瞥すると、捨て台のように言い放った。 「とにかく、落ち葉枚でもうちの敷に入ったら許さないからね! 覚悟しておいて!」
っていく美津の背を見送りながら、私はふと、ある違を抱いた。 (……それにしても、随分とい切ったところに建てたものね) さんのサンルームの基礎コンクリートは、がのけ垣の葉先が触れそうなほど、境界の極限スレスレに迫っていた。 普通、建物を増築する際は、隣境界線から定の距を退させるのが通例ではないのか。 しかし、そのの私は、く追及する気にはなれなかった。 ただ、ににエスカレートしていく美津の当てつけに、胃の腑がく締め付けられるいがするだけだった。