"ママ、弟が生まれたらママも譲るの?" 第18話
「おとうと、きくなったら、音が半分こしてあげるね」
『譲る』のではなく、『半分こ』。 それは、誰かにいられた犠牲ではなく、満たされた子どもが自発に差しす、本物の優しさだった。
その、病のドアが控えめにノックされた。
いたドアの向こうにっていたのは、義母だった。 には、級フルーツの袋と、保温容器が入っているとわれる呂敷包みを持っていた。 パーマはし乱れ、以のような派な化粧はなく、どこかさく縮こまっているように見えた。
健太がすっとちがり、義母のにちはだかるように位置取った。 無言の警戒。
義母は息子のそのたい態度に怯んだように線を落とし、おずおずと病のへを踏み入れた。
「……美咲さん、無事にまれて、よかったわね」
掠れた、蚊の鳴くような声だった。
「お義母さん、わざわざありがとうございます」 私はベッドを起こし、平静な声で答えた。
義母はチラリとコットのの赤ん坊を見たが、すぐに線を逸らし、私の元につ音のに、ゆっくりと膝をついた。 痛む膝を押さえながら、義母の目線が、音の目線のさまでがる。
「音ちゃん……」
音はびくっと肩をすくめ、私のパジャマを握りしめた。 その警戒を目の当たりにして、義母の目から、ボロボロと粒の涙がこぼれ落ちた。
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「音ちゃん……ごめんね。おばあちゃん、本当にバカだったわ」
義母は震えるで、呂敷包みを解いた。 からてきたのは、丁寧に消毒されたタッパー。 蓋をけると、ふわりと、あの甘辛い醤油と汁のりが病に広がった。
牛すね肉の甘辛煮。 音が、世界で番好きな煮物だった。
「これね、音ちゃんのために作ってきたの。美咲さんの分も、健太の分も、盛りで作ってきたわ。……音ちゃん、お肉、いっぱいたべていいのよ。弟のためになんて、絶対にしちゃいけないの。おばあちゃんが……悪なこと言って、本当にごめんね……」
義母はに両をつきそうになるほどく、歳の孫に向かってをげた。
世体を何よりもんじ、嫁や孫を見すことでしか自分のプライドを保てなかった歳の女性が、初めて自分の非を認め、膝を折った瞬だった。
音は戸惑ったように私を見げた。 私は、優しく頷いてみせた。
音はさなで歩にると、義母の差ししたタッパーを、両でしっかりと受け取った。
「……おばあちゃん、ありがとう」
音のその言に、義母は顔を覆って声を殺して泣いた。
すべてが元通りになったわけではない。 義母が吐きした毒が完全に消えったわけでもないし、私と義母のにできた溝が埋まることもないだろう。
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これから先も、適度な距を保ち、干渉させないための防波堤を築き続けなければならない。
けれど、なくともこの瞬、このので誰が番守られるべきなのかという序列は、度と揺らがないものとして確定したのだ。
それから、ヶのが流れた。
埼玉の空はく澄み渡り、よい初のがベランダの洗濯物を揺らしていた。
産ケア施設を退院した、健太は育児休業をヶ取得した。 役員への昇レースを気にして渋るかといきや、会社の司にをげ、勤務や休を駆使して事と音のケアを最優先で回してくれた。 夜のミルク作りも、オムツ替えも、今では私より際がいいくらいだ。
今は、次男のおい初めを兼ねた、久しぶりの自宅での親族の集まりだった。
ダイニングテーブルには、鮮やかな祝い膳と、皿に盛られた料理が並んでいる。 義妹の絵里も息子を連れてやってきていたが、以のように私を詮索するような目つきは消え、おずおずと「美咲さん、体の戻りはどう?」と気遣う言葉をかけてくるようになっていた。
そして、テーブルの央に置かれたのは、義母が朝から煮込んできたという、あの鍋だった。
コトコトと湯気をてる、牛すね肉の甘辛煮。 たちが箸を伸ばし、子どもたちが賑やかに笑いう。
ヶになった息子は、リビングのハイローチェアので、メリーの音にわせて嫌よくをバタつかせていた。