"ママ、弟が生まれたらママも譲るの?" 第17話
健太はに私を座らせると、度玄関へ駆け戻り、音の目のに膝をついた。
「音、パパとママ、病院にってくる。元気な赤ちゃんを連れて帰ってくるからな。ばあばがすぐ来てくれるから、お利に寝ててくれ」
音は唇をぎゅっと結び、私を見た。 「ママ……痛いの?」
「丈夫よ」私は痛みのを縫って、精杯笑ってみせた。「音の弟に、会いにってくるね」
音はさく頷き、自分のさなポケットから何かを取りして、健太ののひらに押し込んだ。
それは、あの溶けかけたチョコクッキーの袋だった。
「これ、ママにあげて。お腹すいたら、べてね」
胸の奥がくなり、界が滲んだ。 もう「のクッキー」ではない。母親を配する、純粋なのクッキーだった。
「ありがとう、音。ママ、絶対にお腹いっぱいべて、元気に産してくるね」
タクシーのドアが閉まり、のをりした。
分娩監装置の子音が響く陣痛で、陣痛は気に加速した。 陣痛の、健太のスマホが何度も激しく振していた。 画面には『母さん』の文字。 夜の連絡を聞きつけた義母が、取り乱して話をかけてきているのだ。
健太は度だけ通話ボタンを押し、廊へた。 ドアの隙から、健太の押し殺した声が聞こえた。
「……母さん、今は美咲の産に集させてくれ。……来なくていいって言っただろ。
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病院の染症対策で、ち会えるのは夫だけなんだ。……終わったら連絡するから、で待っててくれ」
義母の甲い反論を、健太は容赦なく遮って切った。 戻ってきた健太の顔には、もう母親の顔を窺うようなけないは微もなかった。
「美咲、分取るか? ゼリーあるぞ」
ストローを差ししてくれる夫のを、私はく握り返した。 このは変わった。 言葉ではなく、で、臭い現実を引き受ける父親になったのだ。
病院に到着してから。
朝のが分娩のスリガラスをく染める頃、産声ががった。
元気な男の子だった。 千百グラム。力い産声が、部いっぱいに響き渡る。
助産師が際よく赤ちゃんの体を拭き、私の胸のにそっと乗せてくれた。 温かい。ずっしりとい。 全の力が抜け、涙が頬を伝って枕に吸い込まれていく。
健太が私の元で、子どものようにをすすりながら泣いていた。 「美咲……ありがとう。本当によく頑張ったな……ありがとう……」
私は胸ののさな温もりをじながら、病の井を見つめた。 終わったのだ。 あの息の詰まるような、嘲笑と飢餓に怯えていた々が、完全に過になったのだ。
産から。 面会制限が緩された午の病に、実の母にを引かれた音がやってきた。
音はお気に入りのワンピースを着て、し緊張した面持ちでドアの隙から顔を覗かせた。
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「音、おいで」
私がベッドのからを伸ばすと、音はりで駆け寄ってきた。 そして、コットのに寝かされている赤ちゃんには目もくれず、真っ直ぐに私の腰のあたりに抱きついてきた。
「ママ……!」
「音、会いたかった」
ぎゅっと抱きしめると、音のさな体から、懐かしいお様の匂いがした。 音は私の胸元に顔を擦り付けながら、さな声で言った。
「ママを……だっこしていい?」
「当たりでしょ。ずっと抱っこしてていいよ」
音はしたように息を吐きし、私のパジャマの匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。 その姿を見て、実の母が涙ぐみながら部の隅へがっていった。
しばらく私の温もりを確かめた、音は恐る恐る、コットのの弟へと線を向けた。 シワシワの赤い顔をして、さな拳を握りしめて眠っている赤ちゃん。
「……ちいさいね」
「そうね、音も昔はこれくらいさかったのよ」
「……この子、お肉たべる?」
唐突な音の質問に、健太が吹きし、私もわず笑ってしまった。
「ううん、赤ちゃんはね、しばらくの、ママのおっぱいとミルクしかめないの。お肉も、イチゴも、ハンバーグも、ぜーんぶ音のものだよ」
音の顔が、パッとるくなった。 「本当……?」
「本当よ。だから、音はおいしいものをいっぱーいべて、きくなってね」
音は満そうに頷き、赤ちゃんのさなの指先を、差し指でツンと優しく突いた。