"ママ、弟が生まれたらママも譲るの?" 第11話
そこに描かれているのは、鮮やかな卓からくれた部の隅、の丸子にで縮こまる、黒く塗りつぶされた音の姿。 そして、余にかれた担任の先の文字。
『あっちに座ったら、お肉が減っちゃうから。音は、くで見てるだけでいいの』
義母の線が、その文字のを滑った。 瞬、らかに瞳が揺れたのを、私は見逃さなかった。 だが、このはどこまでも自分を正当化することしかできないだった。
義母は画用を乱暴に払いのけ、乾いた笑い声をげた。
「な、何よこれ! 子どもがちょっといじけて描いたお絵描きじゃないの! これを鬼の首を取ったみたいに突きつけて、私を責める気!? だいたい、音ちゃんが勝にひねくれてるだけじゃない! 誰がお肉をべるなって言ったのよ! 私はただ、妊婦のアンタがだらしなくべ過ぎてるって――」
「音は幼稚園で、お弁当をべるのをやめました」
私のたい声に、義母の言葉が詰まった。
「弟のために、お腹を空かせる練習をしてるって、好きなハンバーグをお友達に配って、自分はしかべなかったのよ。それでもまだ、子どもの戯言だって言い張るんですか?」
胃の奥が、雑巾を絞るようにキリキリと痛んだ。 お腹の底で、胎児が苦しそうにさく脈打つ。
「あなたが吐きした『だらしない』『全部べる気か』という浅ましい言葉のせいで、歳の孫が、自分のそのものを罪だと怯えてるの! 族の卓から、自分を消そうとしてるのよ! これ以、このにあなたを置いておく理由が、どこにありますか!?」
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「美咲、もうやめろ!」 健太が鳴のような声をげた。 だが、その声には何の力もなかった。ただ事態から逃げしたいだけの、無様な叫びだった。
義母の唇が、りと屈辱で刻みに震えていた。 「……わかったわよ。そこまで言うなら、てってやるわよ! でもね、タダじゃ済まないからね! 絵里にも、親戚にも、アンタがどんな酷な嫁か、全部言いふらしてやるから!」
義母はひったくるように自分のスマートフォンを掴むと、荒々しい取りでへと駆け込んでいった。 引き戸が、乱暴な音をてて閉まった。
リビングには、肩で息をする私と、両で顔を覆ったままかない健太だけが取り残された。
嵐は、それだけで終わらなかった。
から義母のヒステリックな鳴き声が漏れ聞こえてから、わずか分。 リビングのテーブルに置かれていた健太のスマートフォンが、けたたましく鳴り響いた。
画面に表示された名は『絵里』。 義妹からだった。
健太はおびえたように画面を見つめ、震える指で通話ボタンを押し、スピーカーにした。
『ちょっと健太兄ちゃん! どういうことなのよ!?』
受話器の向こうから、鼓膜を突き破るような絵里の声が響き渡った。 を運転しているのか、背でロードノイズが微かに混ざっている。
『お母さんから泣きながら話があったわよ! 美咲さんに突然「てけ」
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って鳴られて、追いされそうになってるって! 産で変だからって伝いにってあげてる実の親に対して、それとしてどうなの!?』
健太はをもごもごさせ、何も言えない。 「いや、絵里……それはちょっと事があってだな……」
『事なんて関係ないでしょ! 健太兄ちゃんも健太兄ちゃんよ! なんで自分の母親がそんな目に遭わされてるのに、黙って見てるわけ!? 鬼嫁に尻に敷かれてけない! 美咲さんに話代わって! 私が直接言ってやるから!』
私は健太のから、スマートフォンを奪い取った。
「代わりました、美咲です」
『あ、美咲さん!? よくも抜け抜けと――』
「絵里さん、今運転ですか? どこかにをめて、LINEを見てください」
『はあ!? 何言ってるのよ、話をごまかさな――』
「今、族のグループLINEに写真を送りました」
私は通話を繋いだまま、元の自分のスマートフォンを操作した。 昨幼稚園で撮した、音のあの絵。 そして、担任の先がりきした面談記録のメモ。 さらには、先週の健診で助産師からされた、私の度貧血の診断と栄養指導の指示。
その枚の画像を、義母、健太、絵里、私のが入っているグループLINEに送信した。