みかん小説
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"ママ、弟が生まれたらママも譲るの?" 第8話

まずはお母様に、直接ご覧いただきたいといまして」

「……音が、描いた絵ですか」

「はい」

先が、ゆっくりと画用を表に向けた。

目にび込んできたと構図に、私の呼吸は完全に止した。

画用の央には、るい黄と茶のクレヨンで、きなダイニングテーブルが描かれていた。 テーブルのには、オムライスやハンバーグ、鮮やかなごちそうが所狭しと並んでいる。

そのテーブルを囲んで座っているのは、の物だった。

ネクタイを締めて笑っているパパ。 優しく微笑んでいるママ。 そして、ママの膝ので切そうに抱っこされている、ピンクのを着た赤ちゃん。

とも、をきくけて笑っていた。 絵の具もるく、まるで絵本のページのように温かい景だった。

だが。

その華やかな卓から、く、くれた画用のの隅。 部の境界線を示す黒い線の側に。

本の、のさなパイプ子が描かれていた。

背もたれのない、たそうな丸子。 そこに、ポツンと、体育座りのような格好で座っている女の子がいた。

鮮やかなクレヨンは使われていなかった。 黒とだけで塗りつぶされた、さな女の子。 元には笑顔はなく、ただ横に本、細い線が引かれているだけだった。

テーブルのごちそうには、到底が届かない距。

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族の輪から、完全に弾きされた暗がり。

そして、その絵の余に、斉藤先の丁寧な鉛の文字で、こう添えきがされていた。

『絵を描いた、音ちゃんにお話しを聞いた際の記録です』

先の文字を、私の震える瞳が追った。

――「どうして音ちゃんは、あっちの子に座ってるの?」

先の問いかけに対し、音が答えた言葉が、そのまま記されていた。

『おとうとには、ママが必だから。 音はもうお姉ちゃんだから、きくなったから、ひとりでごはんをべるの。 あっちに座ったら、お肉が減っちゃうから。 音は、くで見てるだけでいいの』

界が、ぐにゃりと歪んだ。

「お母様」 斉藤先の声が、底から響くようにく聞こえた。

「音ちゃん、この絵を描いている、度ものお友達とおしゃべりをしませんでした。クレヨンを持つが、ずっと刻みに震えていて……『に描けたよ、お姉ちゃんだもん』って、無理に笑って見せてくれたんです」

先の目にも、涙が溜まっていた。

「歳の子どもが……こんなに孤独な絵を描くのを、私は初めて見ました。お母様、ご庭で体何が起きているのですか? 音ちゃんは今、自分のそのものを、族のから消そうとしています」

言葉が、なかった。 声をそうとすると、喉の奥から獣のような嗚咽が漏れそうだった。

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指先がたく凍りついていく。 ので、何かが音をてて千切れた。

パパとママと赤ちゃん。 で囲む幸せな卓。 そこに、音の席はなかった。

あの子は、歳という幼さで悟ってしまったのだ。 こので自分が席を持つことは、弟の分を奪うことであり、母親を困らせることなのだと。 だから自分から席をち、暗い部の隅のパイプ子に腰をろしたのだ。

誰が、あの子をそこに追いやった? 義母の無神経な嘲笑だ。 健太の卑怯な事なかれ主義だ。 そして何より――「波をてたくない」と、そので義母を鳴りつけもせず、夫に笑いを浮かべ、娘の痛みに蓋をしてきた、私自のさだ。

涙は、もうなかった。 乾き切った瞳の奥に、氷のようにたく、昏い炎が燃え盛るのをじていた。

私はゆっくりとちがり、机のの画用を両で持ちげた。 指先ひとつ、もう震えてはいなかった。

「先」

「はい……」

「この絵、持って帰ってもいいですか」

「ええ、もちろんですが……音ちゃんのお気持ちは……」

「丈夫です」 私の声は、自分でも驚くほど平坦で、かった。 「この絵の席、私が必ず取り戻しますから」

夕暮れのを、音とを繋いで歩いた。

音は幼稚園であった楽しかったことを、懸命私に話してくれた。 「今ね、砂できなお作ったよ」 「おにおあげたよ」

の顔を窺い、嫌を取るように、必におしゃべりを続けるさな娘。

私はそのさなを、決してさないように、痛いほどく握りしめていた。

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