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"離婚しても、うちの嫁を辞めていいとは言ってない" 第21話

「介護1がついたから、週回デイサービスにかせてるけどさ……お袋のやつ、『あんな寄りばかりの所にきたくない』って毎朝駄々をこねるんだよ。靴を履かせるだけで分もかかるんだ。会社には遅刻ばっかりで、とうとう先、営業から総務の窓際部署にばされたよ。料も割カットだ」

男の指先が、りと疲労で刻みに震えている。

「理恵のやつも、曜の病院付き添いを押し付けてくるくせに、費用の折半になると円単位で領収を求してきやがって……のはゴミ敷みたいになってるし、飯もコンビニの弁当ばっかりだ。お袋は毎『真由美さんは良かった、真由美さんを連れ戻せ』って泣き叫ぶし……俺、もう限界なんだよ」

誠司が、すがるような目で私を見つめてきた。 歩、距を詰めてくる。 ドラッグストアのの雑踏の、歳の男が、今にも膝から崩れ落ちそうな顔をしていた。

「なあ、真由美」

震えるが、私の腕に伸びてこようとした。 私はそのきを察し、すっと体を横に引いて躱した。 空を切った誠司のが、力なく虚空を彷徨う。

「俺さ……お袋のオムツも替えたよ。デイサービスの連絡帳も、毎俺がいてるんだ。理恵と喧嘩しながらも、病院の送迎だって半分は俺がやってる。……俺、変わったんだよ」

誠司の声が、必にを帯びていく。

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「おが言ってたこと、全部やってるんだ。介護の現実も、病院の待ちのさも、全部に染みて分かった。俺がどれだけ甘えてたか、どれだけおに頼り切ってたか、痛いほど理解したんだよ」

だから――と、男は乾いた唇を舐めた。

「もう度、やり直せないか? おが戻ってきてくれたら、俺、絶対に介護を全部おに押し付けたりしない。デイサービスもそのまま使うし、オムツの買いしだって俺がやる。費用だって俺が面するから。……俺たち、も緒にいたんだろ? あのを、こんな形で終わらせたくないんだよ」

通が、ちらちらと私たちの方に怪訝な線を向けて通り過ぎていく。 けれど、誠司の目には、目のにつ私しか映っていないようだった。 溺れる者が、最に残された浮き輪を見つめるような、痛々しいほどの執着。

。 私が誠司の妻として過ごした、の最も輝かしいはずだった。

そのを、私は決して「無駄だった」とは言わない。 あの苦しみとの々があったからこそ、私はの勝さを見抜く目を持てた。 制度のみをり、自分のでつ覚悟を決めることができた。

けれど。 それは、この男の元へ戻る理由には、ミリもなり得ない。

「誠司さん」

私は静かに、しかし凛とした声でをいた。

「お母様の介護を、ご自分でなさっているんですね」

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誠司の顔に、ぱっと微かな希望のが差した。 「ああ、やってるよ! 毎やってる!」と力く頷く。

私は、そんな元夫に向かって、やわらかく、穏やかに微笑みかけた。

「それは、本当によかったですね」

「……え?」

誠司の表が、ぽかんと固まった。

「実の息子として、当たりの責任を引き受けられるようになったんですね。お母様にとっても、それが番幸せなことだといます」

「いや……真由美、そういうことじゃなくて……」

「あなたが仰った通り、デイサービスを利用し、実の妹さんと費用を分担し、ご族で試錯誤しながらお母様を支えていく。それが、あるべき族の姿です。私がに入って、すべてを無償で肩代わりしていたあのの方が、異常だったんですよ」

私の声には、りも、皮肉も、嘲笑も混ざっていなかった。 ただ、澄み渡った青空のように、どこまでも平坦で、客観な事実だけを告げていた。

それが、誠司にとっては何よりも残酷な拒絶だったはずだ。 もし私が罵倒したり、過のみ言をぶつけたりしていれば、まだの引っ掛かりがあったかもしれない。 「っているのは、まだ俺に未練があるからだ」と、都のいい解釈ができたかもしれない。

けれど、今の私にあるのは、完全なる『無関』だった。 赤のの庭の事を、くから眺めて「よかったですね」

と労っているだけの、完全な境界線。

「真由美……お、本気配……」

「ええ。本気です」

私は歩、駅の改札の方へと体を向けた。

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