"離婚しても、うちの嫁を辞めていいとは言ってない" 第19話
「いいのよ。分のご飯なんて、煮物を作っても余っちゃうからね。……真由美さん、顔が本当に良くなったわね。引っ越してきたばかりの頃は、触ったら折れちゃいそうな顔をしてたのに」
「そうですか?」
「ええ。今のあなた、すごくいい顔をしてるわ。で暮らすっていうのはね、寂しいことじゃないのよ。誰かの顔を伺わずに、自分のペースで息ができるってことなの。自分の嫌を自分で取れるようになったら、女はね、どこでだってきていけるのよ」
千代子さんの言葉が、じんわりと胸の奥に染み渡っていく。 この半、私が探りで掴み取ろうとしていた答えが、そのい言葉のにすべて詰まっているような気がした。
「ありがとうございます。美しくいただきますね」
鉢を抱えてをげると、千代子さんは「お粗末さま」と軽やかにを振って、自分の部へと戻っていった。
誰かに依されることでしか、自分の義を見せなかった。 私はずっと、「誰かの役にたなければ、される資格はない」とい込んでいた。 けれど、違ったのだ。 自分のでち、自分の嫌を自分で取る。 そんな当たりの自こそが、を真ので自由にするのだと、このアパートの静けさが教えてくれていた。
午からは、代からの友である久美子と駅のカフェで落ちった。
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久美子は注文したパンケーキを嬉しそうにフォークで崩しながら、私の顔をまじまじと見つめた。
「真由美、本当に雰囲気変わったね。昔の、あのいつも何かに怯えてたみたいなオーラが完全に消えてる」
「そんなに怯えて見えてた?」
「見えてたよ! だって、ずっとそうだったじゃない。お茶してても『あ、だから夕飯の支度しなきゃ』とか『お義母さんの薬のだから帰るね』って、いつも計ばっかり気にして。正直、見てて痛々しかったんだから」
アイスティーのグラスについた滴を指でなぞりながら、私は苦笑いを浮かべた。 自分では隠していたつもりだったけれど、周りには全部筒抜けだったのだ。
「……あの頃は、それが私の役割だとってたから」
「役割なんて、押し付けられてただけよ。で、あっちのはどうなったの? の噂で、結構変なことになってるって聞いたけど」
久美子がし声を潜めて尋ねてきた。 元が同じだから、共通のを通じて松本の況が自然とに入ってくるらしい。
私はストローで氷を静かに回した。
「病院の域包括支援センターがに入ってくれたから。介護認定がりて、お義母さんは週に、デイサービスに通ってるそうよ」
「へえ……ちゃんとプロに頼めたんだ」
「ええ。でも、すんなりとはいかなかったみたい。
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理恵さんは『私は実をただからはせない』って突っぱねて、誠司さんと庭裁判所の調歩まで揉めたらしいわ。結局、包括のケアマネジャーさんに『お子様おの扶養義務ですから、費用は折半が原則です』ってされて、渋々毎万円ずつしってるって」
「ざまあみろ、って言いたいところだけど……まあ、妥当な落としどころよね」
久美子がを鳴らした。
そう、妥当なのだ。 劇な罰も、散の劇も起きてはいない。 ただ、今まで私がで無償で引き受けていた現実のコスト――数万円の介護費用と、役所や病院との折衝、毎朝のデイサービスの送りしという々の労働が、本来背負うべき実の子供たちの肩に、制度としてくのしかかっただけだ。
誠司は、週に回のデイサービスの送りしのために、毎朝半に実にち寄らなければならなくなったという。 枝の着替えを伝い、朝の薬をませ、送迎が来るのを待ってから会社へる。 残業も以のようにはできなくなり、営業の第線からされて事務職へ異になったと聞いた。
理恵も、曜の形科の付き添いを押し付けられ、学の息子の部活の試を見にけなくなって、夫と険悪な状態が続いているらしい。
かつて、私を指差して「気な女」
「子供もいない暇」と笑いばしていたは今、自分たちの親の老という底なし沼に、きが取れないほどくを取られていた。