みかん小説
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"離婚しても、うちの嫁を辞めていいとは言ってない" 第18話

ケアマネジャーは眉つかさず、ただ静かに計の針を見つめていた。 こういう族を、このは何百、何千と見てきたのだろう。 誰も引き受けたがらない親の老を、押し付けい、罵りい、最にはの話で骨肉の争いを繰り広げる族の姿を。

「あの……松本様」

ケアマネジャーが静かにを挟んだ。 その言が、の言い争いをピタリと止めた。

「以ご相談に来られた女性の方が、こう仰っていました。『これまでは私がですべてを無償で抱え込んでいましたが、それは族にとっても、制度にとっても、健全な状態でした。これからは実のお子様たちが、ご自分たちの活ので責任を持たれるべきです』と」

誠司の喉から、ヒッと引きつった息が漏れた。

「お母様の介護認定の申請、されますか? それとも、ご族でもうしお話しいをされてからになさいますか?」

差しされた黒いボールペン。 そのペンのさは、かつて真由美がたったで、背負い続けていたものの、ほんの欠片に過ぎなかった。

は顔を見わせ、そして、どちらもペンを握ることができず、ただ沈黙のに沈んでいった。

同じ刻。 で駅れた、閑静な宅の角。

古い町を改装した陶芸教のきなガラス窓から、柔らかな午のが差し込んでいた。

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「松本さん、初めてにしては筋がいいですよ。のひらの力を抜いて、のをじてみてください」

エプロンをつけた講師の穏やかな声が響く。

私は、ろくろのに置かれたたい粘に、そっと両を添えた。 回転するの触。 湿ったの匂い。 のひらを通じて伝わってくる、確かなみと柔らかさ。

スマホは、バッグの奥底で完全に『源オフ』にしてあった。

誰からも邪魔されない。 誰の話にも怯えなくていい。 ただ、自分の指先が作りす、ひとつのさな器の形だけに識を集させる。

し歪んだ、さな湯呑みの形が現れた、私はわずさく息を漏らし、そして、ふっと声をして笑った。

綺麗じゃなくてもいい。 誰かに褒められなくてもいい。 これは、私が私のために、私のを使って作っている、世界でたったつの器だった。

窓のでは、を待つ々の梢が、柔らかなに揺れていた。

婚届を提してから、半が過ぎた。

季節は巡り、あの凍えるようなのは、やわらかな初のに変わっていた。

私の活は、目に見えて輪郭を変えていた。 パート先だった品スーパーで、から声をかけられたのがヶ。 「松本さん、伝票管理も庫の数字も本当に正確だから。もしよかったら、契約社員としてフルタイムで働いてみない?」

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制の定な分から、社会保険完備の制へ。 取りは決して贅沢ができる額ではない。けれど、賃万千円を払い、費と費を差し引いても、毎万円ほどを自分の名義の通帳に積みてられるようになった。

誰の嫌も伺わなくていい。 誰の通帳の残を配する必もない。 私の働いたと汗が、円の狂いもなく私の未来の盾になっていく。 その事実だけで、背筋がすっと伸びるような気がした。

畳ひとのアパートも、すっかり私のになっていた。

段ボール箱だったテーブルは、リサイクルショップで見つけたさな無垢材のローテーブルに変わった。 ベランダには、所の園芸で買ったミントとバジルのさな鉢植えが並んでいる。 朝、窓をけると、緑のりが部の隅々まで通り抜けていく。

コンコン、と控えめに玄関のドアが叩かれた。

チェーンをかけたままけると、隣の201号にむ千代子さんが、鉢をにっていた。 歳。に夫をくし、このアパートで暮らしを続けているだ。

「真由美さん、お休みのところごめんなさいね。実からじゃががたくさん届いたから、煮っころがし作ったのよ。お昼にでもべて」

「千代子さん、いつもすみません。ちょうどお腹が空いていたところでした」

ドアをけて鉢を受け取ると、甘辛い醤油のばしい匂いが湯気と緒にちった。 千代子さんは髪を品に束ね、目元に優しい笑い皺を浮かべている。

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