"離婚しても、うちの嫁を辞めていいとは言ってない" 第9話
子供がいないから、がある。 子供がいないから、誰かの犠牲になって当然。 子供がいないから、私のには守るべき価値などない。
、何度も、何度も、回しに刺され続けてきた言葉だった。 盆や正に親戚が集まるたび、義母と理恵がヒソヒソと交わしていた線。 「子供がいないは気楽でいいわよね」 「私たち母親は自分のなんてないのにね」
そのたびに、私は自分のそのものを恥じるように、台所で、量の皿を洗い続けていた。
けれど。 いま、夕暮れのスーパーの駐輪で、その言葉を聞いた瞬。 私ののに湧きがったのは、しみではなく、底えするようなりだった。
「理恵さん」
私の声は、自分でも驚くほどく、たく響いた。
「私のが余っているかどうかは、あなたには切関係ありません」
「な、何よ……」
「民法第百条第項」
理恵の眉がぴくりといた。
「『直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある』。これが本の法律です。お義母さんを扶養し、世話をする義務があるのは、実の息子である誠司さんと、実の娘であるあなただけです」
「……な、何よ急に、法律の話なんかして……」
「妻である私は、戸籍を抜けた点で完全なです。赤のに対して無償の労働を求することは、罪にもなり得ますよ」
広告
理恵の顔から、さっと血の毛が引いていくのが分かった。 この女は、私が言い返すことなど像もしていなかったのだ。 、何を言われても「すみません」「私の至らないせいで」とをげ続けてきた『便利な召使い』が、突然、を剥いたように見えたのだろう。
「それに」
私は自転のスタンドをねげた。
「子供がいないには、自分のを切にする権利すらないと、本気でっているんですか?」
「そ、そんなこと言ってないじゃない……!」
「言いましたよ。今、はっきりと。私は、あなたたちの勝な都で、自分のも、体も、も削り取られてきました。もう秒たりとも、あなたたち松本のために使うはありません」
ペダルにをかけ、ゆっくりと踏みす。 理恵の横を通り過ぎる瞬、私は度だけ線を向けた。
「の形科、遅れないように連れてってあげてくださいね。半には受付を済ませないと、お義母さんの膝の注射、午まで回されますから」
「ちょっと! 待ちちなさいよ真由美さん! 逃げる気!? 親戚みんなに言いふらしてやるから! あんたのさを、親戚に全部ぶちまけてやるんだからね!!」
背に投げつけられる切り声を、私は度も振り返ることなく置きりにした。
夕暮れのが、照った頬をましていく。
広告
ペダルを漕ぐが、驚くほど軽かった。
その夜、スマホのLINEが狂ったように通を鳴らし始めた。
お呂からがり、髪をタオルで拭きながら画面を見ると、『松本親族』というグループLINEがいていた。 婚したに退会し忘れていたグループだった。
送り主は、理恵だった。
『皆様、夜分遅くに申し訳ありません。実は、先週兄と婚した真由美さんの件で、どうしても許せないことがあり投稿させていただきます』
文だった。 スクロールしても終わらないほどの、被害者面をした悪の塊。
真由美さんが突然をてき、病気療養のお母さんを置きりにしたこと。 病院の付き添いを頼んだら「だから関係ない」とたく突き放されたこと。 お兄ちゃんが過労で倒れそうなのに、スーパーのパートを理由に介護を放棄していること。 子供がいないことを気遣ってあげていたのに、恩を仇で返されたこと。
すぐに、本の伯母や叔父たちからの返信が連なった。
『それは本当かい? 信じられない』 『も松本のに世話になっておきながら、恩らずにも程がある』 『真由美さん、あなたし酷すぎやしませんか? 夫婦の縁は切れても、親子のはあるでしょう』 『世体が悪くて所に顔向けできない。誠司くんがだ』
画面を眺めながら、私は乾いた笑い声を漏らした。
親子の? 恩? 世体?
この親戚たちは、義母が肺炎で入院した、度でも見いに来ただろうか。 義母が夜に脈を起こして救急搬送された、誰かでも病院に駆けつけただろうか。