みかん小説
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"離婚しても、うちの嫁を辞めていいとは言ってない" 第5話

と文句を言う。 エレベーターを待ち、階の総受付ロビーに辿り着いたには、すでに分を回っていた。

ロビーは、異様な気と消毒液の匂いに満ちていた。 数百もの齢者が子を埋め尽くし、案内放送の子音がひっきりなしに鳴り響いている。

「保険証、どこだ?」

誠司が自再診受付ので苛たしげに尋ねると、枝は提げバッグのをゴソゴソと漁り始めた。

「ええと……どこに入れたかしら。いつも真由美さんが持ってたから……」

「自分の保険証くらい自分で管理しとけよ!」

「鳴らないでよ! 寄りをいじめて楽しいの!?」

周囲の線が斉に突き刺さる。 ペコペコと笑いを浮かべながら、誠司は枝のバッグから無理やり財布を引っ張りし、ようやくマイナンバーカードを見つけして械に突っ込んだ。

吐きされた受付票には、無慈な番号が印字されていた。

『循環器内科 診察予定:1115分』

「……!?」

誠司はわず声を裏返した。 計を見る。まだ半だ。あとくも、この息苦しい待で過ごさなければならないのか。

「お腹空いたわね。お茶買ってきてよ、誠司。あの温かい緑茶のやつ」

ベンチにく腰掛けた枝が、当然のように顎で指示をす。 売へり、ペットボトルのお茶を買い、戻ってくると今度は「採血が先よ、採血の受付票を取ってきて」

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と言われる。

採血のには、すでに以の列ができていた。 番号が呼ばれるのを待ち、採血を終え、再び内科の待に戻ったには、誠司のは棒のようになっていた。

ポケットので、社用スマホが狂ったように震え続けている。 画面を見るたびに、直属の部からの業務連絡や、クライアントからの催促メールが溜まっていく。

『松本課、本の全体会議の資料、まだ共されていませんがどうなっていますか?』 『先方の部が、からの打ちわせに来られない件で激されています』

「くそっ……!」

誠司は待の隅に駆け込み、声で必に言い訳のメッセージを打ち込んだ。 だが、枝がくから「誠司! どこってるのよ、もうすぐ呼ばれるかもしれないじゃない!」と声で息子の名を呼ぶ。

周りの齢者たちが、ややかな目で誠司を見つめる。 いたたまれなさと恥ずかしさで、誠司の顔は真っ赤に染まっていった。

診察に呼ばれたのは、予定をさらに分過ぎた、午分のことだった。

「松本枝さん、どうぞ」

護師に促され、誠司は枝の背を押すようにして第診察に入った。 机に向かっていたのは、髪交じりの疲れた顔をした主治医だった。カルテのモニターを見つめたまま、で問いかけてくる。

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「松本さん、変わりないですか。回の血液検査の結果、カリウムの数値がしめにていますが、事で何かカリウムのいものを摂りすぎたりしていませんか?」

「えっ……事、ですか?」

枝がおろおろと誠司の顔を見げる。 誠司は笑いを浮かべながら適当に答えた。

「あ、いや、普通にべてるといますけど。特に変わったものは……」

医師がカルテから顔をげ、鏡の奥から鋭い線を誠司に向けた。

「付き添いのご族の方ですね。回の受診の際、血圧帳の記入がし途切れていたので、毎朝起の血圧推移を記録して持ってくるようにお伝えしていたはずですが。帳はお持ちですか?」

「血圧帳……? お袋、持ってるか?」

「え? 私、カバンに入れたかしら……」

枝が再びバッグのを引っかき回すが、てくるのはアメ玉のゴミやポイントカードばかりだった。

医師の溜息が、狭い診察にく響いた。

「松本さん。先から圧剤をしいものに切り替えています。利尿剤の成分が入っているため、ちくらみやふらつきの無、朝晩の血圧の変が投薬管理の命線なんですよ。いつも付き添われていた女性の方は、今はどうされたんですか? あのは毎細かく数値をグラフにして、薬のみわせまで確認してくださっていましたが」

「あ、あれは……の妻で……先週、婚しまして」

誠司が消え入りそうな声で答えると、医師はあからさまに眉をひそめた。

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