"離婚しても、うちの嫁を辞めていいとは言ってない" 第4話
、何度も何度も聞かされた言葉だった。 『俺はで稼いでる』『おは子供もいないんだから、のことをやって当然だ』。
そのたびに私は、元夫のプライドを傷つけないように言葉をみ込み、「分かった、私がなんとかする」と引き受けてきた。 そうやって私が引き受け続けた結果、この男は歳にもなって、自分の母親がどんな病気で、どんな薬をんでいて、病院で何待たされるのかすら、度もろうとせずにきてきたのだ。
「誠司さん」
私はめきったコロッケを見つめながら言った。
「婚届にサインをした、私は玄関の靴箱のに青いファイルを置いてきました」
『あ? ファイル?』
「ええ。病院の診察券、保険証のコピー、過の検査結果の推移、毎の血圧の記録ノート、それから現処方されている種類の薬の名と副作用の注点。すべてあのにインデックスをつけて理してあります」
『……はあ? なんだよそれ。そんなの見てる暇ねえよ』
「見てください。あなたがやらなきゃいけないことです」
『ふざけんな! たかが病院の送り迎えだろ! に乗せて連れてくだけのことに、なんでそんなげさな類が必なんだよ! おが、半だけ取ってをせば全部丸く収まるんだよ! なんでそんなにケチくさいんだよ、子供もいないくせに!』
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受話器の向こうの言葉が、私の臓をかすりもせず、虚空を通り過ぎていく。 かつてならく突き刺さって私を泣かせたはずの言葉が、今はただ、ひどく幼稚な駄々にしか聞こえなかった。
「もう度と、私に連絡してこないでください」
『おい、待てよ! 真由美! 逃げる気かよ! おい――』
私は通話を切り、画面をタップして元夫の番号を着信拒否に設定した。 続いて、義母の固定話も拒否リストに入れた。
静寂が戻ってきた。
計の秒針が、カチ、カチ、と規則正しい音を刻んでいる。 のひらにじんわりと汗をかいていた。 全の筋肉が張っていたことに気づき、私は肩の力を抜いて、く、く息を吐きした。
これでいい。 もう、あのたちの嫌を伺う必も、理尽な声に怯える必もないのだ。
翌の曜。 関方は朝から鉛のが垂れ込め、蒸し暑いだった。
誠司は、朝過ぎの点で、すでに悔の淵にたされていた。
「痛たたた……ちょっと誠司、もうしゆっくりれないの? ブレーキの踏み方が荒いわよ。真由美さんはもっと静かに運転してくれたわよ」
助席でシートベルトを握りしめ、枝が眉をひそめて文句を垂れ流している。 誠司は苛ちを隠そうともせず、舌打ちを噛み殺しながらハンドルを握り直した。
昨夜、真由美に話を切られた、誠司は妹の理恵に泣きついた。
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だが理恵は「はPTAの役員会があるから絶対無理。お兄ちゃんがってよ。だいたい、真由美さんに逃げられたお兄ちゃんの責任でしょ」とたく言い放ち、話を切ってしまった。
結局、誠司は今朝、司に平をげて午半休を申請せざるを得なかった。 「どうしてもせない営業会議のに、母親の付き添いか? 独じゃないんだから、奥さんに任せられないのか」と嫌を言われ、胃のあたりがきりきりと痛んでいた。
「病院なんて、連れてって先の顔見て薬もらうだけだろ。昼には会社にけるはずだ」
そうを括っていた誠司の柱は、病院の敷に入った瞬にへし折られた。
病院の周囲を取り囲むように、いの列ができている。 掲示板には、無にも『駐 満』の赤い文字が点滅していた。
「……嘘だろ。まだ半だぞ」
「だから言ったじゃないの、もっとくなきゃダメだって! 真由美さんはいつもにはをて、第駐のの列に並んでくれてたのよ!」
「そんなの聞いてねえよ!」
わず鳴り返すと、枝は「キーキー言わないでよ、に響くわ」とを塞いだ。
ノロノロとしかまない列に閉じ込められること分。 ようやく駐にを滑り込ませたには、誠司のシャツの背はすでに寝汗のようなや汗でぐっしょりと濡れていた。
をりると、今度は枝がを引きずりながら「歩くのがすぎる」