みかん小説
本棚

"夫の会社に弁当を届けたら「昔の知人」にされた" 第13話

男の面目。 妻としての務め。

どこまでっても、この男ののには「自分」しかない。 自分がついた浅ましい嘘のツケを、今度は私に払わせようとしている。 私の仕事を奪い、私の尊厳をに晒し、化のようにをげさせることで、自分の傷ついたプライドを繕おうとしているのだ。

私は何も言わず、ただ静かに夫を見つめ続けた。 その沈黙をどう受け取ったのか、夫は懐から通の封筒を取りし、テーブルのに置いた。

「ほら、これ。先仮契約した、みなとみらいの築マンションの申込控えだ」

の箔押しがされた、産会社のパンフレット。 で毎しずつ貯め、私のボーナスも注ぎ込んで作った共名義の定期預。 として用した、百万円。

「来週、本契約の続きがある。付として、あの百万を振り込む段取りになってるんだ。おもずっと、広いマンションで緒に暮らしたいって言ってたろ? ローンはおとのペアローンで組む予定だったけど、おが仕事辞めるなら、俺の単独ローンに組み直せるかに掛けってやるからさ」

まるで、きな恩赦でも与えるかのような調だった。 自分が妻を養ってやるのだから、これくらいのは引き受けろとでも言いたげな顔。

テーブルののスマートフォンが震えた。

広告

画面にる、義母からのLINE。

『結さん、直から聞きました。男の失敗を許して支えてこそ、本物の妻です。く横浜へって、直のの回りの世話をしてあげなさい。マンションのも、で貯めたんでしょう? 庭を固めるのが先決です』

親子揃って、寸分違わず同じ考回をしていた。 私を、のとして見ていない。 男のを都よく補修するための、便利な部品としかっていないのだ。

私はすっと息を吸い込み、自分の部へ向かった。

デスクの引きしから、あらかじめ用しておいた枚の類を取りす。 指先は、もう微も震えていなかった。

リビングへ戻り、夫の目の、テーブルの央にその枚のを並べた。

パサリ、と乾いた音がした。

「……なんだよ、これ」

夫が眉をひそめ、枚目の類に目を落とした。

それは、産会社から取り寄せた『購入申込撤回届並びに付返還請求』だった。 私の名義で、すでに署名と捺印が済まされている。

「お……これ、マンションの解約届……? なんで……」

夫の声が裏返る。 そして、その隣にある枚目の類に線を移した。

そこには、私の会社のレターヘッドと、代表取締役の角印。 『京本社・デザイン戦略 チーフマネージャー昇受託』。

「私、昇することになったの」

部の空気が、瞬で凍りついた。

広告

夫の喉仏が激しくし、類と私の顔を何度も往復する。

「な……昇……? お、横浜に来るんじゃ……」

「共座の百万円のうち、私が拠した百万円は、私の個座へ戻す続きを取ったわ。残りの百万円は、あなたの座に返されるようにしてある」

私は夫の目を、え切った瞳でまっすぐに見据えた。

「私、横浜にはかない」

「……かないって、どういうことだよ」

夫の喉から、掠れた声が漏れた。 テーブルのに置かれた枚の類を見つめたまま、けないでいる。

みなとみらいの築マンションの解約通。 そして、私の京本社でのチーフマネージャー昇受託。

と黒の活字が、リビングの蛍灯のでややかにっていた。

「どういうことって、言葉の通りよ」

私は腕をろし、夫の線をまっすぐに受け止めた。

「私は横浜には引っ越さない。京で、このまま仕事を続ける」

「待てよ、結! 冗談だろ!?」

夫がテーブルに両をついてを乗りした。 コーヒーカップがガタリと揺れ、茶い液体が数滴、理調の板にねる。

「マンションはどうすんだよ! あそこ、倍率倍の気物件だったんだぞ!? で何ヶもモデルルームに通って、取りも当たりも散々吟して決めたじゃないか! 付だって、今キャンセルしたら違約で数万持ってかれるんだぞ!」

「違約なら、私の座から払うわ」

切の迷いなく、私は即答した。

「付の百万円から、規定のキャンセル料を引いた残額が私の元に戻ってくる。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: