"夫の会社に弁当を届けたら「昔の知人」にされた" 第12話
昇すれば与もがり、きなプロジェクトを任されるチャンスだった。 けれど、夫と「来には横浜で緒に暮らそう」と約束していたから、通勤が能になる京本社でのチーフ職は辞退し、横浜支社への異か、最悪のは退職してフリーランスになるつもりでいたのだ。
自分のキャリアを犠牲にしてまで、夫との活を守ろうとしていた。 その活自体が、真っ赤な偽物だったというのに。
「結ちゃん、絶対に辞退しちゃダメよ」
美咲さんは私の両肩をく掴み、真剣な目で見つめてきた。
「男のために自分のを切り落とすような真似、絶対にしないで。自分ののハンドルを、に渡しちゃダメ」
美咲さんのの温もりが、え切っていた私の肩にじんわりと染み込んできた。 奥歯をぎゅっと噛みしめ、私はさく頷いた。
そのの夕方。 横浜の夫から、震えるような文面のLINEが届いた。
『終わった。全部めちゃくちゃだ』
続いて、文の連投。
『野寺が今、朝番で課にプロジェクトの担当変更を申した』 『理由を聞かれた野寺が、全部話したらしい』 『俺が既婚者であることを隠してたこと、母さんの病気のこと、全部』
スマートフォンの画面を見つめながら、私はゆっくりと息を吐いた。 野寺彩は、私の像以に聡で、決断のい女性だったのだ。
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彼女は自分のキャリアと尊厳を守るために、番正しく、番残酷な方法を選んだ。
本の企業の営業部において、「嘘つき」のレッテルがどれほど致命か。 特に、女性蔑とも取れる誠実なで輩女子社員を弄び、内の病気まで偽っていた男。 そんなに、誰がなクライアントを任せるだろうか。
号がび交う修羅などなかったはずだ。 ただ、静まり返ったオフィスで、司からのたい線と、同僚たちの軽蔑に満ちた沈黙が、夫を包み込んだに違いない。 これこそが、世体と同調圧力が支配する本社会における、最もい制裁だった。
曜の夜。 週末でもないのに、夫が京の部に現れた。
ドアがいた瞬、漂ってきたのは酒の烈な匂いだった。 ネクタイは曲がり、ワイシャツの第ボタンは引きちぎられ、髪はボサボサに乱れている。 かつて私がアイロンをかけ、入れをしていた清潔のある夫の姿は、見るもなかった。
「……満かよ」
リビングに入ってくるなり、夫は壁にをついて私を睨みつけた。
「俺のは全部なくなったよ。フロアのやつら、誰も俺と目をわせようとしない。課からは『来期の昇は見送る』って内々に言われたよ。野寺のやつ、被害者面して課内の全員を方につけやがって……!」
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夫はドスンとソファに倒れ込み、を抱えて唸り声をげた。
「俺はちゃんと公表したぞ! 課にも同僚にも、『実はに結婚してました』ってげて回ったんだ! 恥を忍んで、プライド全部捨てて謝ったんだよ!」
「そう」
私はたいお茶をテーブルに置き、歩引いた位置にった。
「それで、何て言われたの?」
「何てって……『そうだったんだ、おめでとう』って、誰も笑ってない目で言われたよ! まるで汚いゴミでも見るような目でさ!」
夫は急に顔をげ、私を指差した。 その瞳に宿っていたのは、反省ではなく、歪んだ逆みだった。
「だからさ、結。今度はおが俺を助ける番だろ」
「……は?」
を疑う言葉に、わず眉がねがった。
「助けるって、何を?」
「おが横浜に来るんだよ!」
夫はソファからを乗りし、必な形相でまくしてた。
「今すぐ京の仕事を辞めて、横浜に引っ越してこい! 来週末、うちの部署のBBQ会があるんだ。そこにちゃんとした格好で来て、『主がいつもお世話になってます。週末婚で寂しいいをさせてしまって、主がつい悪ふざけをしてしまったみたいで……』って、おからみんなに説しろ!」
臓が、たいのに沈んでいく覚がした。
「そうすれば、ただの夫婦のコミュニケーションの延だったってことになるだろ? 妻のキャラにシフトすれば、まだ社内での信頼を回復できるかもしれないんだよ! おが妻として、俺の面目をて直すのが当たりだろ!?」