"夫の会社に弁当を届けたら「昔の知人」にされた" 第10話
『……な、何よそれ……』
「毎週末、直さんが京へ帰ってくる理由を何て説していたか、ごですか?」
義母の息を呑む音が、スピーカー越しにへ届く。
「『暮らしの母がい臓病で、いつ倒れるか分からないから、毎週末は病のために帰らなければならない』。そう言って同僚たちの同を買って、親孝で誠実な独男性のフリをしていたんですよ」
沈黙が落ちた。
く、息苦しい沈黙。 いつもなら「息子の方」をして私を鳴りつける義母が、言葉を失っていた。
世体を何よりもんじるだ。 千葉の所付きいでも、親戚の集まりでも、「うちの直は貿易会社でバリバリ働いていて、親いの自の息子」と触れ回ってきただ。 その自の息子が、会社の同僚たちので、母親を「病でのかかる邪魔な実」に仕てげていた。 その事実が、義母のプライドにどれほどの亀裂を入れたか、像に難くなかった。
「……そ、そんなの……何かの聞き違いでしょう……」
義母の声は、もはや震えていた。 先ほどまでの威圧はどこにもない。
「直に確かめてみてください。……それから、お義母さん」
私は最に、静かに釘を刺した。
「私を責めるに、ご自分の育てた息子がでどんな顔をしてきているのか、しっかりご自の目でご覧になった方がいいといます」
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それ以、義母の返答を待たずに通話終のボタンを押した。
液晶画面が暗転する。 静まり返った個ので、私はく、く息を吐きした。 震えていたのは、恐怖からじゃない。 、の奥底に押し込められていたりが、形を持って溢れしてきたからだ。
曜の夜。 京の部の鍵が、々しく回った。
玄関の引き戸がき、音がリビングへづいてくる。 部のかりをつけて待っていた私を見て、夫は靴を脱ぐなり、鬼のような形相で詰め寄ってきた。
「お……母さんに何吹き込んだんだよ!」
バッグをに投げ捨てる。 ドサリ、と鈍い音がした。
「母さんから泣きながら話がかかってきたぞ! 『あんた、私のこと病気扱いして会社で笑い者にしてるのかい』って、取り乱して話にならなかった! 夫婦の揉め事に親を巻き込むなんて、お、正気かよ!」
夫の目は血り、こめかみに青筋が浮きがっていた。 ゴルフの練習から帰ってきたはずなのに、その顔には疲労と焦燥がべったりと張り付いている。
私はソファからちがらず、膝のに置いた両をじっと見つめた。
「巻き込んだのは、あなたでしょ」
「あ?」
「母親の臓病をダシにして、も独のフリをして若い女の子と遊んでいたのは、あなたじゃない」
私のあまりにも平坦な声に、夫の声が喉の奥で詰まった。
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夫は狼狽し、線を部の隅へと泳がせる。
「……あいつ、野寺が全部喋ったのか」
「今、品川で会ってきたわ」
その瞬、夫の顔から完全にが抜け落ちた。 見かれた瞳が、信じられないものを見るように刻みに震える。
「あ、会った……? お、野寺に会いにったのか!?」
「彼女から連絡が来たのよ。曜、私が受付に置いてきた名刺を見てね。彼女、泣いてたわよ。自分が既婚者とらずに騙されて、奥さん気取りをさせられていたって」
「ち、違う! 騙すつもりなんて……!」
夫はよろめくようにダイニングチェアの背もたれにをかけた。 指先がガタガタと震えている。
「あいつとは何もない! 誓ってもいい、をしたりはしてないんだ!」
「をしたかどうかなんて、もうどうでもいいの」
私は顔をげ、夫の目をまっすぐに見据えた。
「問題は、あなたが、私との活を完全に消しっていたこと。そして、その嘘を維持するために、母親の病気まで捏造して、独の居の良さを満喫していたことよ」
夫の喉が、ごくりと鳴った。 言い訳を探すように唇がわななき、けれど何もてこない。
静まり返ったリビングに、壁掛け計のカチコチという針の音だけが響く。
「……怖かったんだよ」
い沈黙のあと、夫のから漏れたのは、消え入りそうな掠れ声だった。
夫はそのに崩れ落ちるように子に座り込み、両で顔を覆った。
「横浜に異になって……初めての暮らしでさ。周りの同僚はみんな若くて独で、週末になればみにったり、コンしたり、自由にきてた。