"夫の会社に弁当を届けたら「昔の知人」にされた" 第6話
カチャリ、と乱暴に皿のにトーストが投げされた。
「急にそんなこと言いしたら、『今まで隠してたのは何だったんだ』って司からも同僚からもい目で見られるだろ! 俺の社内評価はどうなるんだよ? お、俺の世を邪魔したいわけ?」
どこまでも、自分のことだけ。 私の尊厳がどれほど踏みにじられたか、どんないで京で待っていたかなんて、この男のの片隅にもしない。
「評価ががるのは、あなたが嘘をつき続けた結果でしょ。どうして私がそれを気遣わなきゃいけないの?」
「結!」
夫が机を叩いてちがった。 けれど、もう以のように体が竦むことはなかった。 ただただ、目のの男が底れず劣で、れに見えるだけだった。
「もういい。おと話してるとがおかしくなりそうだ。今は同期とゴルフの打ちっぱなしにってくる」
夫は乱暴に財布との鍵を掴むと、に玄関へ向かった。 バタン、と乱暴にドアが閉まる音が、休の静まり返った部にく響き渡る。
残されたリビングで、私はく息を吸い込んだ。
夫はまだらない。 昨、横浜のオフィスをる直、私が何をしてきたかを。
あの非常階段で夫と別れた、私はロビーの受付カウンターへ戻っていた。 そして、置きりにされた弁当箱の脇に、自分の名刺を枚、そっと滑り込ませておいたのだ。
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デザイン会社のロゴと、私のフルネーム。 そして裏面に、震えるでき残したボールペンの文字。
『本直の妻・本結です。先ほどご挨拶できず失礼いたしました。野寺様、もしよろしければ、度お話しさせていただけないでしょうか』
夫のスマホの通でった、あの女性のフルネーム。 野寺彩。
もし彼女が、夫の既婚をりながら弄んでいた共犯者なら、この名刺は破り捨てられて終わりだろう。 けれど、もし彼女もまた、あの男の嘘に巻き込まれた被害者なのだとしたら――。
テーブルので、私のスマートフォンがく震えた。
画面を見る。 見らぬ番号からのショートメッセージだった。
『突然のご連絡をお許しください。昨、総受付でお名刺を預かりました、野寺と申します。……信じられないいで文面を拝見しました。、もし能であれば、しだけおをいただけないでしょうか。直接お会いしてお話ししたいです』
指先が、微かに震えた。
罠かもしれない。 あるいは、沼の罵りいになるかもしれない。 けれど、私には確かめなければならない現実があった。
あの男が、私のを消しってまで作りげた「横浜での活」の、本当の姿を。
曜の午。 品川駅構内の、通りのいオープンカフェ。 き交う幹線の乗客たちの喧騒が、くから波のように押し寄せていた。
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アイスのアールグレイティーのグラスに、細かい滴がびっしりとついている。 私は袋を脱ぎ、たくなった指先をぎゅっと組み直した。
約束の分。 エスカレーターをがってくる波のに、見覚えのある姿を見つけた。
淡いグレーのトレンチコート。 曜に夫のネクタイを直していた、あの女性だ。 平の華やかな雰囲気とは打って変わり、髪をめの位置で束ね、化粧も驚くほどい。 その表には、隠しようのない極度の緊張と怯えが浮かんでいた。
彼女はカフェの入りでち止まり、キョロキョロと内を見渡した。 そして、で座っている私と目がった瞬、息を呑むようにち尽くした。
コツ、コツ、とヒールの音がづいてくる。
「……本、さん……でしょうか」
掠れた声だった。 私は静かに頷き、向かいの席をで示した。
「野寺さんですね。どうぞ、座ってください」
野寺彩は、壊れ物に触れるような恐る恐るの作で、コートの裾を引いて子に腰をろした。 元に置かれた皮のバッグを両でく抱え込んでいる。 指の関節が、くなるほど力が入っていた。
ウェイトレスが注文を取りに来て、彼女は震える声でホットコーヒーを頼んだ。 員がれるのを待って、彼女は々と、テーブルにがつきそうなほどくをげた。
「本当に……本当に、申し訳ありませんでした」