みかん小説
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"夫の会社に弁当を届けたら「昔の知人」にされた" 第3話

「男の職には、いろいろあんだよ。独のフリをしてた方が、きやすいこともあるんだ。取引先との付きいとか、若としてのフットワークとかさ」

「独の、フリ……?」

を疑った。 このは今、自分が何を言っているのか分かっているのだろうか。

「まさか、会社のたち、あなたが結婚してることを誰もらないの?」

夫は答えず、苦々しそうに線を逸らした。 それが何より雄弁な答えだった。

の芯が、すうっとえていく。 りすら通り越して、目のが真っ暗になる覚。

私が京で、きりの部で夫の帰りを待ち、賃や費をきっちり半分しい、義母の病院の付き添いまで引き受けていたこの。 夫はここ横浜で、自由な独男性としての々を謳していたのだ。 妻のを綺麗さっぱり消しった世界で。

「……もういい」

私はく息を吐きした。

「話は、で聞くから」

「おい、結!」

呼び止める夫の声を背に残し、私は非常階段の扉を押しけた。 エントランスには戻らず、通用からへる。

真昼のみなとみらいの陽が、痛いほど眩しかった。 ビルが吹き抜ける、私は駅へ向かって歩き始めた。 界が歪んで、元がおぼつかない。 けれど涙は滴もなかった。 ただただ、胃の奥が雑巾を絞られるように痛かった。

京へ戻る線の内。

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吊り革に掴まりながら、私は窓に映る自分の顔を眺めていた。

歳。 品パッケージのデザイナーとして、さな制作会社で働いている。 毎締め切りに追われ、終際まで作業することもあるけれど、仕事には誇りを持っていた。

、直と結婚したとき、周囲からはし配された。 入籍してすぐに直の横浜転勤が決まり、私の職は京。 緒にむならどちらかが通勤に半以かけるか、仕事を辞めるしかなかった。

「しのだけ、週末婚みたいな形になっちゃうけどしてくれるか? 来には京に戻れるように絶対成果をすから」

そう言ってをげた夫の誠実さを信じていた。 お互いのキャリアを尊するための、向きな別居婚だとい込んでいた。 だから、直が「横浜の部は狭いし、男の暮らしで散らかってるから来なくていいよ。俺が毎週末京に帰るからさ」と言ったときも、私の負担を減らそうとしてくれているのだと、謝すらしていたのだ。

全部、私の都のいいい込みだった。 あの部に私を呼びたくなかったのは、散らかっているからじゃない。 妻の痕跡を、横浜に残したくなかったからだ。

世田のワンルームマンションに戻ったのは、午を回った頃だった。 靴を脱ぎ、静まり返ったリビングに入る。

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曜の夜から曜の朝まで、夫が過ごすこの部には、夫の私物がたくさんある。 お気に入りのマグカップ。 クローゼットにかかった何着ものスーツ。 本棚に並ぶビジネス。

ここには確かに、夫の活がある。 けれど、横浜のあの層ビルには、私の痕跡は片たりともしなかった。

私は着替えもせず、ダイニングの子に座り続けた。 部のかりもつけないまま、が暮れていくのをただじっと見つめていた。 窓のが群青からいへと変わる。 計の針が、を回った。

カチャリ、と玄関の鍵がく音がした。

靴を脱ぐ微かな音。 ため息。 そして、リビングのドアがそろりといた。

暗のに座る私を見て、夫はビクッと肩をねさせた。

「……なんだよ、気もつけないで」

夫の声には、らかに警戒のが混ざっていた。 にはコンビニのビニール袋が提げられている。 おそらく、駅で酒でもんで、気持ちを落ち着かせてから帰ってきたのだろう。 微かにアルコールの匂いが漂ってきた。

パチリと壁のスイッチが押され、蛍灯のいが部を満たす。 眩しさに目を細めると、夫は気まずそうに線を宙へ彷徨わせながら、ダイニングテーブルの向かい側に腰をろした。

「昼は、悪かったな」

ボソリと、夫が言った。

「急だったから焦ってさ。

あんな言い方するつもりはなかったんだ」

「……何が、悪かったの?」

私の静かな問いに、夫は眉をひそめた。

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