みかん小説
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"小一の息子の問い「ママ、僕を捨てたの?」" 第19話

「……俺は、父親失格だな」

夫が、自嘲するようにポツリと漏らした。

「失格かどうかは、これから悠真が決めることよ」

私は夫の目をまっすぐに見据えた。

「あなたがこの半、必で悠真を育ててくれたこと自体は、嘘じゃない。仕事と育児の両がどれだけ過酷だったか、私にも痛いほど分かる。……でもね、亮介。自分が苦しいからって、その痛みを子供に擦り付けていい免罪符にはならないの」

夫は唇をく噛み締め、俯いた。

「私も悪かったのよ。あなたに任せられないって、勝に抱え込んで、倒れるまで音を吐かなかった。……とも、親として未熟だったの。だから、をかけてやり直すの。夫婦に戻れるかどうかは分からないけれど、悠真の親としての距を、から作り直すのよ」

夫はく息を吐きし、公正証の番の署名欄に、自分の名をき込んだ。

角ばった、几帳面な文字。 けれど、あのマンションのリビングのホワイトボードにかれていたような、狂気じみた鋭さは、もうそこにはなかった。

がけ、桜の蕾が膨らみ始めた。

私は、息子の学から徒歩分ほどの所にある、築の賃貸アパートでしい活を始めていた。 階の角部。当たりがよく、ベランダからはくに埼玉の並みが見渡せる。

体調は、驚くほど定していた。

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定期検診の血液検査の数値も問題なく、主治医からも「順調そのもの」とお墨付きをもらっていた。 週に、所の活用品メーカーの事務パートにも復帰した。 無理に残業はせず、自分のペースで働ける環境をえた。

部のリビングには、さな製のダイニングテーブル。 そして、その横には――。

あの納戸の奥底から救いした、悠真の製の学習子が置かれていた。

背もたれののマークにかれていた赤いバツ印は、姉と緒に除液とヤスリを使って、綺麗に消しった。 しだけ肌が削れてくなったけれど、そこには今、悠真が自分で選んだのシールが誇らしげに貼られている。

ピンポーン、とインターホンが鳴った。

計を見ると、午分。 曜の、決まった。

ドアをけると、黄い子をし斜めにかぶった悠真がっていた。 学の公学童から、で歩いてやってきたのだ。

「ママ、ただいま!」

「おかえり、悠真」

悠真は玄関でスニーカーを脱ぎ散らかすと、リビングへダッシュした。 かつてのように、靴の向きを狂ったように揃えたりはしない。 脱ぎっぱなしのスニーカーを見て、私はさく苦笑しながら、で揃えてやる。

それでいいのだ。 学の男の子なんて、これくらい雑で、々しくていい。

「洗いとうがい、ちゃんとしてね!」

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「はーい!」

洗面所から、ジャバジャバと豪にを流す音が聞こえてくる。 鹸で赤く剥けるまでを洗うような仕は、もう完全に消えていた。

悠真はリビングに戻ってくると、ランドセルから箱を取りして机のに置いた。 あの真っ黒なプラスチックの箱ではない。 先、で文具にってしく買い直した、緑の幹線の箱だ。

ファスナーをけると、から削りかすでし汚れた消しゴムと、さのバラバラな鉛が転がりてきた。

「ママ、今ね、算数で百点取ったよ!」

「本当? すごいじゃない」

「あとね、のパン、個残しちゃった」

悠真は、しだけ目遣いになって、私の顔を伺った。

私は笑って、あの子のくしゃくしゃのを撫でた。

「そっか。お腹いっぱいだったのね。残してもいいのよ。夜ご飯、好きなハンバーグだから、その分いっぱいべてね」

「うん! ハンバーグべる!」

悠真の顔に、満の笑顔が咲いた。 の顔を窺うのではない、の底からしきった、子供の笑顔。

夫とは、今も別居を続けている。 週の半分は夫が、もう半分は私が悠真を見守る活。 週末には、夫が悠真を連れて公園にくこともある。 々、でファミリーレストランで事をすることもあるが、復縁の話はまだ急いでいない。

お互いに、自分のでち、自分のさと向きうが必だった。

それでいいとっている。 世体のための「完璧な族」

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