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"12年消えていた元夫が、娘の式で「父親」になる" 第16話

見ていたのは、拓也さんの信用と、佐藤のおだけだった……! 『恩を売ってやったんだからを返せ』って……私の喉元に、借のを突きつけてきた……」

拓也さんが、ポケットからくしゃくしゃになった封筒を取りし、私ののカウンターに置いた。 昨夜、あの男が奈緒の胸元にねじ込んだという、百万円の連帯保証承諾だった。

「お義母さん」

拓也さんが、奈緒の隣に並んで膝をついた。

「奈緒は、愚かな過ちを犯しました。自分の体面のために、お義母さんの尊厳を踏みにじり、私の実を危険に晒そうとした。許されることではありません」

拓也さんの言葉は容赦がなかった。 けれど、そのは、震える奈緒の背にそっと添えられていた。

「昨夜、泣きながらこの類を私に見せて、全てを告した奈緒を見て、私は最初、激しいりを覚えました。婚もをよぎりました。……ですが、奈緒は最に言ったんです。『拓也さんに迷惑をかけるに、警察にこう。私がお父さんを呼んだんだから、私が終わらせなきゃいけない』と」

拓也さんは私をまっすぐに見据えた。

「私は、このとやり直したいとっています。そのためには、あの男のを、私たちのから完全に排除しなければならない。お義母さん、どうか力を貸していただけないでしょうか。族として、戦わせてください」

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にをついたまま震える娘と、その背を支える義理の息子。 その姿を見つめながら、私はく息を吸い込んだ。

胸の奥に澱んでいたたいりが、静かに、けれど揺るぎない覚悟へと変わっていく。 もう、で耐え忍ぶは終わったのだ。

「……奈緒、ちなさい」

私は娘の脇にを差し入れ、引にその体を抱え起こした。 で汚れた奈緒の膝を、で払う。

「拓也さん、顔をげてください。……ええ、終わらせましょう。あの男が放置してきたツケを、円残らず支払わせるが来ました」

そのの午、私たちはつの所を回った。

つ目は、武蔵野警察署の活全課。 奈緒の首に残ったどす黒い皮血の診断と、百万円の連帯保証承諾、そして昨夜の待ち伏せの状況を記録したメモを提した。 担当の刑事は類を瞥し、険しい顔で言った。 「確な未遂と恐、傷害に当たります。相方に警告の話を入れ、それでも接を試みるは現犯逮捕の続きを取ります」

つ目は、拓也さんの勤務先である方のコンプライアンス統括部。 拓也さんは直属の司に事をすべて打ちけ、親族を騙る男から支への嫌がらせ予告があったことを正式に報告した。 側は即座に支の警備体制を化し、元夫が接触を図ってきたは即座に通報する体制をえた。

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あの男が切り札にしようとしていた「佐藤の世体をまみれにする」という脅しは、拓也さんの自浄作用によって、事に完全に無力化された。

そしてつ目。 私が向かったのは、京方裁判所の民事執センターだった。

元には、に交わした『婚付等契約公正証』の正本。 そこには、制執認諾文言が刻まれている。 裁判を起こす必すらない。 未払いの養育費、万円の分。利息と遅延損害を含め、総額百万円。 その全額を回収するための、財産示続と債権差押えの申てを、私は淡々と済ませた。

あの男がわずかに持っている座、そしてブローカーとして登録されている産仲介数料の請求権。 すべてに対して、法な差し押さえの網が張り巡らされた。

逃げは、完全に塞がれた。

約束の刻は、午。 所は、奈緒のアパートの最寄り駅にある、通りのいファミリーレストランだった。

指定したボックス席に、元夫は現れた。 昨夜と同じ汚れたコートを着て、落ち着きなく周囲を見回しながら、獲物を探すハイエナのような目をしている。 奈緒がで座っているのを確認すると、元夫は元に卑屈な笑みを浮かべ、股で歩み寄ってきた。

「おい、奈緒。判はもらってきたんだろうな? ぐずぐずしやがって……」

元夫が席に腰をろそうとした瞬、角となっていた通側の席から、拓也さんがちがった。

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