"12年消えていた元夫が、娘の式で「父親」になる" 第7話
そのには、本学支援構からの奨学返還誓約の控え。 そして、私の名で借り入れた国民活融公庫の教育ローンの返済予定表。
すべての用のに、私の印鑑と、返済完の赤いスタンプが押されている。
「総額で、百万円」
私は静かに、けれど語語を刻みつけるように言った。
「これが、あなたが学を卒業するためにかかったおの全てよ。私が回、毎万円ずつ引き落とされながら完済した記録。ここに、あのの名がでも載っているかしら?」
奈緒の顔から、急速に血の気が引いていった。 唇をわななかせ、線を類ので彷徨わせている。
「拓也さんからメッセージが届いたわ。披宴の夜、あのは拓也さんに何と言ったの? 自分が借をしてまで奈緒の学費を全額面した、そう言ったんでしょう」
「それは……」
「奈緒。あなた、そのにいたのよね? あのが拓也さんにそう自している、あなたはその隣にいたんでしょう?」
奈緒の肩が、さくねた。 答えはない。だが、その沈黙こそが肯定だった。
「なぜ否定しなかったの」
私の声が、く震えた。
「そのおがどこからたのか、あなたが番よくっているはずでしょう? 私が夜にどんな顔をしてパートから帰ってきていたか、あなたが番くで見ていたはずでしょう?! どうして……どうしてあの男の真っ赤な嘘を、黙って肯定したの!」
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喫茶の隅にいたウェイトレスが、私の気迫に怯えたようにこちらを振り返った。 だが、もうを抑えることなどできなかった。 、誰にも頼らず、歯をいしばって積みげてきた私の尊厳が、娘の沈黙によって棒に差しされたのだ。
奈緒は俯いたまま、両を膝ので固く握りしめていた。 爪が皮膚にい込み、刻みに震えている。 やがて、ポツリと、に落ちるような声が漏れた。
「……ってたよ」
「え?」
奈緒が、ゆっくりと顔をげた。 その瞳には、申し訳なさなど微もなかった。 そこにあったのは、鬱屈したが破裂したような、剥きしの憎悪と絶望だった。
「ってたよ! お父さんが円もしてないことくらい、最初から全部ってたよ!」
内の空気が、瞬にして凍りついた。 の線など、もう奈緒の目には入っていなかった。 赤く充血した瞳から、粒の涙がぼろぼろとこぼれ落ちていく。
「の、お母さんの引きしを見たの。お父さんからの『養育費減額請求』の調申も、督促状も、全部見た! お父さんが私を捨てて、別の女のところにったことくらい、とっくにってたよ!」
「奈緒……っていたのなら、どうして……」
「どうしてって何よ!」
奈緒の声が、鳴のように内に響き渡った。
「じゃあお母さんは、私にどうしろって言うの?! 『あなたのお父さんは最のクズで、あなたを捨てて逃げたのよ』って、惨めな気持ちできていけって言うの?! 友達の結婚式にくたびに、お父さんと腕を組んでバージンロードを歩く友達を見て、羨ましくてにそうになってた私の気持ちなんて、お母さんにはこれっぽっちも分からないじゃない!」
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胸を、鋭利な刃物で突きにされたような衝撃だった。
「私はね、結婚式のだけでいいから……たっただけでいいから、『まともな父親がいる庭の娘』になりたかったの!」
奈緒は激しくしゃくりげながら、テーブルのの類を乱暴にで払いのけた。
「拓也さんのは、お父さんもお母さんも派なで、親戚もみんなちゃんとしてるの! 私だけが欠陥品なの! 父親に逃げられて、母親が必にパートで育てたなんて……そんなれなの話、向こうの親族にられたくなかった!」
が擦れい、母の遺した借用がへと滑り落ちる。 私はそれを拾うことすらできず、ただ直していた。
「お父さんが嘘をついた? そうよ、嘘よ! でもね、あののお父さんは、誰が見ても派な父親だった! 私のために泣いてくれて、拓也さんので堂々としてくれて……私、まれて初めて『お父さんにされてる』ってえたの! どうしてお母さんは、そのたったのいさえ、壊そうとするの?!」
「されてる……?」
自分の声が、どこかくから聞こえてくるようだった。