"歩けるようになった夫が、最初に捨てたのは私だった" 第3話
「あ……」
佐藤さんの喉から、さな息が漏れた。 驚きではない。 「ついにその話が奥さんのに入ったか」という、隠し事をしていたの反応だった。
「先、っていたんですね」
私の声が、く震えた。
「健介さんが、で暮らす準備をしていたこと。病院の方でも、それを提にリハビリ計画をてていたんじゃないですか?」
佐藤さんは困惑したように指を組み、いため息をついた。 そして、元に持っていたクリアファイルから、数枚の類を抜きした。
「奥様。本来、これは患者様ご本の個報に関わるもので、ご族であっても勝にお見せすることはできない規則なんですが……」
そう置きしてテーブルのに置かれたのは、枚の公な用だった。 京都指定の式、『活自度評価申請』、そしてそのに添付された『自訓練移計画』。
表の隅に、赤のマーカーで囲まれた特記事項があった。
【庭復帰計画における支援者(配偶者)の関与除申請】
血の気が、気に引いた。
「関与……除……?」
文字のを、脳が拒絶する。
「健介さんから、ヶにい申しがあったんです」 佐藤さんは、声を潜めて言った。
「今の活自訓練、および宅環境設定において、奥様を同席させないでほしいと。ご本による単独の署名と捺印がなされています。
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病院としても、成患者ご本の確な表示であり、本の自欲を尊する観点から、これを受理せざるを得ませんでした」
「どうして……どうして私が、除されなきゃいけないんですか!? 私は、夫の介助をも欠かさずやってきたんですよ!? 歩器の選定も、お呂の改修事の申請も、全部私が役所と掛けってめてきたんです!」
わずちがりそうになる私を、佐藤さんは沈痛な面持ちで制した。
「カルテの約欄を、お見せします」
差しされた用のコピー。 そこには、担当医師と佐藤さんの連名で、夫の面談記録が記されていた。
『患者より、庭内における配偶者の過干渉および制限に対するい精神苦痛の訴えあり』 『自歩訓練の捗を配偶者に示することで、「まだ無理」「危険」との制止を受け、自己効力が著しく損なわれていると主張』 『単活による自己決定権の回復が、本の社会復帰において最優先課題と判断』
自己決定権の回復。 過干渉。 精神苦痛。
その無質な活字のつつが、を殴りつける鈍器のようにり注ぐ。
「……健介さんは、私に監されてるって、病院で言ってたんですか?」
「奥様のお気持ちも、努力も、僕たちは全員分かっています」 佐藤さんは痛ましそうに私を見た。
「ですが、患者様のには、介助を受け続けること自体に耐え難い屈辱をじる方がいらっしゃいます。
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奥様が献であればあるほど、健介さんは『かされている自分』に押し潰されそうになっていた。自の目処がった今、彼は奥様かられることでしか、自分のでったという実が得られないんです」
「だからって……黙って捨てるみたいにていくのが、筋なんですか!?」
私の叫びは、静かな談話の壁に虚しく吸い込まれていった。 佐藤さんはそれ以、何も言わなかった。 ただ、くをげた。
その沈黙が、何よりも残酷だった。 病院のプロたちから見れば、私は夫の回復を支えた功労者などではなく、夫の精神自を阻害していた「過剰な荷」に過ぎなかったのだ。
元が覚束ないまま、リハビリセンターをた。 のぬるいが、涙でえ切った頬を撫でていく。 自分が積みげてきたものが、音をてて崩れていく。 私は、誰のために仕事を辞めたのだろう。 誰のために、自分の代をドブに捨てたのだろう。
スマートフォンが、バッグので激しく震え始めた。 画面を見ると、着信表示には『義母』の文字。
嫌な予しかしないまま、通話ボタンを押した。
「……もしもし」
『あ、美さん? ちょっと、どういうことなのよ!』
をつんざくような甲い声が、鼓膜を突き破らんばかりに響いた。
『健介から今、連絡があったわよ! アパート借りてで暮らすって! あんた、体あの子に何をしたの!?』
「何をしたか、ですか?」