"「子どもがいないから」と義妹の長男を譲ろうとする義家族" 第17話
そのの夕方。 悠真を預かりから引き取り、美穂の待つ産ケア施設への引き渡しを終えた。
施設の個で、悠真は母親の胸にび込み、声をげて泣いた。 美穂は傷の痛みを堪えながら、何度も何度も「ごめんね、好きだよ、絶対にさないからね」と抱きしめ続けていた。 その景を見届けて、私はで自宅マンションへと戻った。
鍵をけてリビングに入ると、直がに座り込んでいた。 かりもつけず、暗がりので項垂れている。
「……真紀」
掠れた声で、私の名を呼んだ。 には、破り捨てられた転園届の類が散らばっている。
「悪かった……俺が、全部悪かった。おが流産したのこと……リハビリなんて、あんな酷いこと言って……本当に取り返しのつかないことをした」
に両をつき、額をフローリングに擦り付ける。 座だった。
「婚だけは……勘弁してくれ。やり直したい。これからは、お袋の言うことなんか聞かないから。おの仕事を番に応援するから……」
涙混じりの、懇願の声。
連れ添った夫だ。 かつてはし、共にしみを分かちおうとした男だ。 だが、その座を見ろす私のには、さざ波ひとつたなかった。
「直」
たく、平坦な声をした。
「顔をげて」
夫が恐る恐る顔をげる。 涙とでぐしゃぐしゃになった顔。 その姿に、かつての頼もしさは微も残っていなかった。
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「私はね、のあなたの甘えを、今すぐ許す気にはなれないわ」
「真紀……」
「婚届は、今すぐにはさない。でも、それはあなたを許したからじゃない。静に、これからの活と財産を清算するための猶予よ」
私はバッグから、枚のを取りしてテーブルのに置いた。 今、区役所の帰りに公証役へ相談して作成した、夫婦関係の覚だった。
「私の部から、あの恐竜の布団を今すぐ撤しなさい。私の私物を元に戻して、度と勝にあの部に入らないこと。それから、あなたの実への経済支援は切打ち切り。活費の分担も、完全に折半にするわ」
夫は震えるでをに取り、そこにかれた厳しい条項に目を落とした。
「……分かった。全部、おの言う通りにする」
「約束を度でも破ったら、その瞬に婚届を提します。役所には、婚届受理申もしてあるから、あなたの都で勝な真似はできないわよ」
夫の肩が、がくりと落ちた。 この男が背負うべきは、先だけの反省ではなく、これから何もかけて支払うべき信頼の負債だ。
私は夫を瞥することもなく、奥の畳へと向かった。
部に入り、気をつける。 に置かれた青い恐竜の布団セットを、無言で引っ張りげた。 カバーを剥ぎ、布団を圧縮袋に詰め、段ボール箱へ押し込む。
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クマのナイトライトのコードを抜き、箱に戻す。
乱暴に追いやられていた私のソーイングテーブルを、部の央へと引き戻した。 窓をけると、夜の澄んだ空気が部いっぱいに流れ込んでくる。
テーブルを雑巾で丁寧に拭きげ、お気に入りのラベンダーのアロマオイルを滴垂らした。 作りかけのパッチワークを広げ、針箱を元の位置に置く。
部が、私の呼吸を取り戻していく。
ここは、誰かの都のいい代わりにされる所ではない。 度の流産を乗り越え、今まで懸命に働いてきてきた、藤井真紀というのの聖域だ。
私はく息を吸い込み、夜空を見げた。 のかりの向こうに、のたいが静かに瞬いていた。
季節は巡り、。
ドラッグストアのには、真しいランドセルを背負った子供たちの写真が飾られ、の陽がアスファルトを柔らかく照らしていた。
への昇の内示を受け、業務の引き継ぎで忙しい々を送っていたある曜の午。 私のスマートフォンが鳴った。
美穂からのLINEだった。
『お義姉さん、こんにちは。今、もしご都がよろしければ、悠真とでしだけお邪魔してもよろしいでしょうか? ご迷惑でしたら、慮なく仰ってくださいね』
丁寧で、こちらの都を第にいやる文面。
私はスケジュール帳を確認し、く返信を打った。
『からまでなら丈夫よ。